終話

 翌朝、下駄箱の中に空色の封筒が入っていた。その場で封を開けると、『Congratulations!!』の文字。ついにこの時が来てしまった。そう思った。

 それから最後の調整をして僕は宇宙へ飛んだ。月の裏側は思ったよりも快適で、建物の中でしか宇宙服を脱げないことをのぞけば、ほとんど地球の上と変わらない。もちろん、望遠鏡もある。自前で買ったものなんかより、断然いいものだ。何せ降り注ぐ隕石を観測しなければいけない。おかげで星を見る暇も無い。

 でも、その方が良い。きっと、月の望遠鏡が映す星は、額縁が捉えていた星とは別の星だ。

 それに地球も見えなくて良かったと思う。

 四十万キロは声を飛ばすにあまりに遠い。

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月と海 阿尾鈴悟 @hideephemera

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