物語の風光明媚さは最早芸術作品に他ならない


 中華を舞台にした、人と妖の狭間に立つ盲目の主人公。盲目ゆえに葛藤し、己が存在の意味に困惑する。

 この作品の醸し出す幻想的な世界観は中華の山中に存在する神仙の世界を幻視させる程に美しい。そして妖の世界の不思議な気配をその文章から確かに感じる。これは芸術的な絵巻物を彷彿とさせるものだ。

 人としての血に応えながらも人に戻れぬ主人公の選んだ結末は──。

 短編ながらに世界が広く深い作品でした。

その他のおすすめレビュー

喜村嬉享さんの他のおすすめレビュー226