第6話 異変

 駅から徒歩数分、地上数百メートルはあるビルにオフィスが入ってる。いつも通り、1階のコンビニで野菜ジュースを買おうとすると、現政権のミスや言い間違えなんかを厳しい口調で指摘する、野党の、ある意味有名な議員が居た。

 会社の前にバンを停めて、○○反対!即刻退陣!と幟を上げて、マイクパフォーマンスを行っている途中だった。朝早くからお疲れさん、だれも聞いてる人いないけど。

 なんでもこの議員、数年前の政権交代で外務大臣にまで上り詰めた(?)男であるが、過激な発言や暴言、居眠り、女性秘書問題などで国民から大ブーイングを浴び、わずか2か月半で辞任した。


 まあ言ってることは極論に近いものがあった。消費税は0%にしろとか、お隣の国にミサイルを撃ち込めとか。中学生でもわかることだが、そうなってしまっては社会福祉や公共サービスの停止や質の低下に繋がりかねないし、後者に至っては戦争ものだ。できるわけがない。


 そんな議員だが、今日に限ってはやけにおとなしい。一度話し出せば、ワイドショーやゴールデンタイムのニュースでも取り上げられるレベルの暴言を吐くくせに、今日に限ってやたらと丸くなっていた。


「えー、皆さん!私はお約束いたします!国民の皆様が安全、安心に生活できるよう、全力で取り組ませていただきます!」


「まずは――」


 バカでかい声で、頭にガンガン響くのは嫌なのだ。野菜ジュースを買ってすぐ、演説を聞くまいとエレベーターのボタンを押した。

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