第25話 守りたいもの
「ねぇ、あの剣はなんだったの?」
イスリアが聞いてきた。たしかに、何も知らないイスリアとユウからしたら疑問に思うのも無理もないな。俺はユウを助けたあと、自然に消えていった剣を使った左手を見る。心の中で俺は「あいつ……。ありがとう」と囁いた。
イスリアとユウに魔法陣から出る間に時間が少しあるため、その間にテキパキとあったことを話した。イスリアとユウは驚きを隠すことが出来なかった。
「ボーマくんが剣帝!?」
「ボーマが東領の剣帝だったとはね……」
ユウからイスリアの順に驚きを言葉にして表現してくる。
「ああ、そうだ。俺も初めて聞いた時は驚いたもんだよ。東領の安全は俺が守る。君たちを最優先でな」
「ありがと……う」
ユウは礼を言ってきたが、イスリアは無音で頷く。と、ここまで話したところで外の光が刺してくる。ついに出口だ。
「久々の外だなぁ……なっ!」
俺の感覚が久々だった。そして息を吸って吐いて前を見たら、そこには複数人の黒フードを被った連中がいた。そう、暗黒術師団である。
一番前にはサルトリアとアーマジアがいた。彼らが仲間をここへ集結させたのだろう。
「我、アーマジアが命ずる!暗黒術師団よ!各々の魔法を放ち、敵三名を全滅させよ!」
他の暗黒術師団たちが反応し、一斉に魔法陣ができあがる。これはまずいことになった。こんな狭い路地裏であんなに撃たれたら死ぬのは明白だ。フードを着直していたサルトリアが次に発言する。
「彼らは我らの実験を邪魔したという、大罪がある!皇帝陛下の命に従い、骨を残すことなく蹂躙せよ!」
「うぉおおおお!」という声が暗黒術師団から一斉に出てくる。そして、たくさんの魔法陣から多種多様な魔法が放たれる。イスリアが小声で俺に言ってくる。
「ユウ、ボーマ、聞いてほしいの。ここは私の命令に従ってね。私の浮遊魔法は最大3人まで私に捕まることができるの。いい?私が1,2,3!と言ったら、3の合図で私の手につかまってね?」
「「わかった」」
異口同音で俺とユウは答える。
「行くよ……1」
魔法がどんどん近づいてくる。しかし、なぜかそれらが遅く感じる。
「2」「3!」
俺とユウはしっかりとイスリアの手というか、腕につかまる。すると、イスリアの足が地面から離れて、空に浮かぶ。その後、勢いよく空へ向上し、イスリアが一気に空を蹴ったかと思ったのも束の間。ものすごいスピードで空を行く。そして屋敷が見える方向へ方向転換してスピードを保ったまま屋敷へ突入。ドゴオオオン!という轟音が鳴り響く。
「ふぅ〜着いたぁ。お疲れ様二人とも」
「いや、お疲れ様じゃねぇよ!?危なすぎるだろ!頭ぶったしよぉ……。まあ、ありがとう。ユウ、大丈夫か?」
隣で横たわるユウに心配の声をかける。
「う、うん……だい、じょうぶ」
「そうか」
俺は安楽のため息をつく。これで今日のやる事は完了か。
なぜかイスリアが顔をぷく〜と膨らませてフンっとやっているが、俺は首を傾げてはて?となっているだけだ。
「ユウ……!!」
ウールラさんが轟音を聞きつけてここへ来たのだろう。ユウが無事だったことに一安心しているらしい。
「よかった……無事で。ありがとう、イスリア様、ボーマさん。なんて礼をしたらいいのか……」
「礼なんていらねぇよ。ユウが無事であることが一番の礼だ……」
「ボーマ、たしかにそうかもしれないね」
二人で顔を見合いながらクスクスと笑う。それを見たウールラさんもクスクス笑う。ユウは顔を傾げているが。
「さ、昼にしようぜ」
みんなそれに頷いて食堂へと向かう。
「俺が、剣帝……か」
「どーしたの?ボーマ!置いて行っちゃうよ?」
「あー!待ておらぁ!」
俺が呟いていたうちに3人はもう階段を降り始めていた。この風景を守っていきたい……。皇帝を打ち倒し、この国に平和を……。
Book・The・World『白紙を自分の冒険で描いていく異世界冒険物語』 龍牙王鳳 @saoaloggounlimitedworld1245
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