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「おお、和子か」
箔打ち機に向かっていた人物が振り返り、老眼鏡を額に跳ね上げ、顔をくしゃくしゃにして微笑む。
私の祖父、浅野健太郎。六十五歳。「
金箔の製法は大きく分けて二種類ある。一つは伝統的な製法で作られる「縁付金箔」で、もう一つは近代的な製法で作られる「
だけど……
やっぱり、縁付金箔の需要そのものは以前に比べたらかなり落ちたらしい。だから職人もどんどん減っていて、高齢化が進んでいる。金箔職人の平均年齢は七十歳くらいだそうだ。おじいちゃんはまだ若い方なのかも……
金箔職人と言っても、実は工程によってさらに三種類に分けられる。最初に、材料となる金の合金を作って千分の一ミリくらいの厚さまで伸ばす
おじいちゃんは箔打ち職人だ。とにかくひたすら金箔を薄く薄く延ばしていく。最終的に一万分の一ミリの厚さになった金箔は、向こうが透けて見えるほどだ。これが箔移し職人によって
だから、私は子供の頃からおじいちゃんの工房に行くのが好きだった。と言っても私の家からは結構距離があったから、そんなに何度も行けたわけじゃないけど、大学に入って車の免許を取ってからは、なんだかんだで週に二回くらいはここに来ている。
「まだお仕事終わらないの?」
「うぅむ……仕事はもうすぐ終わりそうねんけど、な……」おじいちゃんは少し顔をしかめる。「今日はこれから来客があるげんて」
「来客?」
「ああ。何でも、
「……いやぁ……どうかなぁ……」
確かに私も金大生だけど、文系の地域創造学類だからなあ……あんまり理工学域に知り合いはいないんだけど……
「てか、その人、何しに来るの?」
「俺もよく分からねえ。ロボットがどうとか、人工知能がどうとか……」
「???」
私が首を捻っていると、チャイムが鳴る。どうやらその来客のようだ。
「はーい」
私は玄関に向かう。
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