第4話 お葬式

 村で亡くなった人たちのお葬式が行われることになり、長老は祭司の服を着て横一列に並んだ死体にお辞儀をして式を始めようとしている。

 死体の中には、敵の死体のもある。けれど、皆平等に傷は見えないようにされ、服も綺麗なものを着せられている。顔や髪型も清潔にきれいにメイクされていた。

 参列者は、生き残った村人数名だけだった。そのなかにテラと男児もいる。

 式が始まり長老が始まりの言葉を述べ始めると急にわか雨がふりだした。村人は慌てて死体に雨がかからないように死体の上に布を被せ始めた。すると、死体の目が開き、次々に起きあがる。始めは、皆びっくりしてギャーとかわぁ~と叫び出すものもいたが、よく見ると寝起きのように穏やかでケガを訴えるものもいない。

 我が子を抱きしめる母親、家族全員が生き返り涙を流しあう家族等この不思議な現象を奇跡と感じざるを得ない。しかし、喜びだけではなかった。

 「敵も生き返ったぞ!」村人のひとりが恐ろしい形相で指さす。見るとすでに敵も立ち上がっている。

 「命だけは助けてくれ…武器もない。信じてくれ…」生き返った敵の数名は、村人たちに命乞いをした。村人の中には今すぐ殺せと野次をとばす者もいる。

 長老は手を上にあげて静粛にと合図したあと敵に向かい静かに話した。

 「貴方たちの命を私たちが勝手に奪える権利はない。この村にはもう近づかない約束ができるなら今すぐ去りなさい。」

 「わかった…約束するよ…」

 そう言うと一目散に走り去っていった。

 にわか雨がやむと、大きな虹が空にかかっている。テラの胸で眠る男児は屈託のない笑みを浮かべていた。

 

 

 

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