シュナ

山葡萄

第1話 男児誕生

 これは、遥か昔の物語。宮殿でデイル王が側近の百眼の力を持つジルに尋ねる。

 「光の力を持つ男児は生まれたのか…」デイル王は盲目で、手を器用に動かしながらテーブルのカップを口に運ぶ。

 「…まだ、まだ、感じません。光の力を持つ男児はまだ生まれておりません…」ジルは世界を見通す千里眼を持つ数少ない能力者でデイル王の目として働いている。

 「絶対に生かしてはならぬ。光の力を持つ男児は殺すのだ。生まれたらすぐに殺せ。」

 デイル王の椅子の脇にヘビがとぐろを巻いて割れた舌を出している。

 その時ジルが叫んだ。

 「感じました。光の力を持つ男児が生まれました。」

 デイル王が、ジルの方をみて尋ねる。

 「場所はどこだ?」

 「ここから東へ10000程です。」

 「どのような様子だ。」

 ジルは、東の方向をしばらく向きこう話す。

 「歓喜、神々しい光が男児から放ち、周りのものは、祝福に満たされております。涙を流し祈る者もいて皆男児の誕生に膝まずいております。」

 「歓喜だと…私を差し置いてそんな事は許されない。私が、一番でなくてはならない。民は私だけに膝間付くのだ。第一隊長をここに呼べ!」

 ジルはしばらくして第一隊長をデイル王の前に連れてきた。

 「東へ向かい、男児を皆殺しにするのだ。一人残らず殺してこい。」

 第一隊長は、機械的な返事をする。

 「了解。直ちに東へ向かいます。」

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