石炭袋
ジョバンニとカムパネルラが別れる瞬間に出てくるのが、天の川にあいている穴『石炭袋』です。この穴が現れた瞬間、カムパネルラは消え、ジョバンニは一人列車に取り残されます。
この石炭袋は、暗黒星雲のことだと言われています。最近では、新たな星が生まれるガスの塊がこの暗黒星雲であることが分かっていますが、賢治が生きている当時はどういったものであるのか解明されていませんでした。この石炭袋の穴は、ジョバンニとカムパネルラの乗る列車が別れた象徴だともいわれています。
カムパネルラは消える瞬間、窓の遠くにあるきれいな野原を指さし、そこに自分の母親がいること、あそここそ本当の天上なんだと語りますが、ジョバンニにはそれが見えません。
これは、カムパネルラの目的地が近いことを暗示する描写であると言えます。カムパネルラもまた、川に溺れたザネリの身代わりに命を落とした殉教者であると言えます。ジョバンニと同じくどこまでも行こうとする彼は、サザンクロスではない別の天上に降り立っていきます。
それは、彼が二度とジョバンニと出会えないことを暗示する別れでもあり、彼が新た命を生きる第一歩でもあるのでしょう。
ジョバンニはかけがえのないカムパネルラの死を受け止め、終着駅である現世へと戻ってくるのです。
殉教者でない彼は、どこまでもどこまでも人のために歩いていかなければいけません。それは、ジョバンニにとって新たな人生の始まりなのです。
銀河鉄道小辞典 猫目 青 @namakemono
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