あとがき

 俺もうこの話のあとがき2回書いてんだよね。

 なのにまだ語ってないことがあるんだよね。


 これを書き始めたのは五位鷺決定稿をメチャメチャ削って3分の2にした頃でした。

 俺の前には五位鷺決定稿があるが俺の次回作が平安ラブコメであることを担当さん以外に誰も知らなかった頃。


「こいつら……取り柄ありすぎじゃない?」


 五位鷺はキャラ文芸だ。乙女逆ハーだ。


 預流は女性ファンに好感を持たれる破天荒一生懸命ヒロインに若干の狂気を足したオンリーワンのブッダクレイジー。

 人に施しながら高級貴族の誇りを持って兄の皇族年金でタダメシを食い、将来の夢は捨身飼虎のニート女。

 彼女の中では何も矛盾がない。


 メインルート、イケメン坊主なのに僧侶枠ではなく俺にも正体不明のBL野郎、メチャメチャ世の中の役に立ってキャラも立っている。

(※邇仁と並べると大分理解できて正体不明でなくなる)


 平安タラシイケメン、賢木中将、自己肯定力は一番高く王朝文学の登場人物として一番真っ当。

(他がモブだから)


 そして「平安」がつかない「普通枠」の安倍播磨守靖晶。

 ……俺の言う「普通枠」は全然普通ではない。


 皆取り柄がある。

 皆、世の中の役に立っている。

 何だかんだ預流ちゃん、兄宮さまに何かあっても信者集めて新教団作るとか日本全国布教行脚の旅とか始めて何とかなるよ。


 こんな立派で見てて面白い人たちでないと恋愛はできないのか?


 夢と魔法を散りばめすぎた。

 そこまでキラキラで、バシバシに伏線が回収される巧妙な物語が必要とされるほど世の中は悪いのか?

 商業作家の浮き沈みは一層激しく、油断すれば食いっぱぐれる世の中でひたすら美しく面白いことだけを語って生きていかねばならないのか?

 新作プロットもそれはそれは取り柄のある頭がよくて見ていて面白い人たちばかりだ。

 長く書いて無理矢理短くすると登場人物が無駄なことをしないので合理的で意味のある行動だけをする。


 というわけで五位鷺時空では1秒たりとも生きていけない取り柄のない人ばかり集めたのがこのていたらく。

 預流もこの話聞いてたら途中でブチギレて全員正座させて説教し始めると思う。

 下書きにはそういうのあった。


 いや衣通さんは高級貴族の姫君としては預流よりハイスペでニートとはほど遠い働き者でスケベジジイと頑張って戦ったりしたのだが、いかんせん道頼のオーバーキルモードが解放されるとお姫さまぶって何もしなくなってしまうのだ。

 高度な摂関政治に対応していないのかもしれない。


 だからこの話はそもそも商業に「こういうの書かせて」などと打診はせずいきなりネット公開だった。

 どう考えても文庫一冊にするには短いというのもあった。

 そのせいで途中、演出意図が事故ったが……


「復讐は何も生み出さない」

 最近のブームだ。

 何度だって話題になる。

「あの人はそんなこと望んでない」


 望む望まない以前にそこに当事者はいますか。

 何かその気になって勝手に盛り上がってはいませんか。

 当人なら「地獄の果てまで追いかける」とか「幸せになるのが最大の復讐」とかいくらでも言っていいけどさ。


 誰かが勝手にやってくれる、それでは駄目なのだ。

 復讐は望む本人がしなければ何の意味もない。


 だから馬が難波津の港に着いたかどうか、その後に何か起きたかどうかはどうでもいいのだ。


 皆、「落窪物語は平安のシンデレラだ」って言う。

 皆が原典の道頼のダークサイドと法華八講、筑紫引っ越し編から目を背ける。

 面白くないから。

 ドン引きだから。

 女子向けじゃないから。

 平安ものがウケるのは女子だから。

 キラキラとかチートとかないと。


 本当にそれでいいのか。

 文学は死んだのか。

 海は死にますか山は死にますかSFはどうですか。


 さあこの次はpixiv新人百合職人コンテストだ。

 お楽しみに。

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非モテヒキコモリコミュ障だけど平安時代だから結婚できてしまった~落窪物語より~ 汀こるもの @korumono

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