4-19 今は、ここまでかな?
家に戻ってみると、葛西をはじめ、男1から男4まで、萱津以外の侵入してきた5人が、ぎっちりと縛られて、客室の床に座らされていた。
有田さんが縛ったのかと思ったら、全部、美枝ちゃんがやったんだとか。
「こんな、凝った縛り方、おれにはできないよ」
と、有田さん。
この縛り方だと、縄抜けは、ほぼ不可能なんじゃないかと…。
ただ、有田さんは、知り合いの警察の人に、今日、この家に侵入してくる輩がいることと、こうやって捕まえてしまう可能性を話して、そうなったときに、速やかに連行してもらえるように、内々の準備を頼んでいた。
まあ、向こうも、有田さんの知り合いらしく、ある程度、こちらの状況を知っているようなので、こういう話はすぐに通じるらしいし、しかも、すぐに対応してくれる。
まあ、侵入犯逮捕の手柄は、向こうのものになることだし…。
ただ、取り調べは、面倒そうな連中だけれど。
ということで、警察が来るまでには、もう少し時間が掛かる。
で、その間に、あやかさんが、今までの萱津との戦いについて、みんなに、食堂で報告することになった。
萱津を連れてこなかったこともあって、みんな、どうなっちゃったんだろうと、気になっているようだったから。
さゆりさんと美枝ちゃんは、ここから、あの、ウニカバの最後は見たらしいんだけれど…、あれと萱津との関係は、わかっていなかった。
そして、もともと、萱津は死んでいたなんて話、葛西たちには聞かせることできないので、この客室では話せない。
それで、食堂で、ということになった。
その間、おれが客室で葛西たちを見張っていることになった。
おれだけじゃ、心許ないと思ったんだか、サッちゃんも一緒に居てくれたんだけれど、どういうわけか、葛西たち、かなりのダメージとショックとを受けていて、暴れるどころか、ちょっと苦しそうにうつむいて、じっと床に座ったままだった。
その、葛西たちのダメージとショックの原因。
葛西と、彼と一緒にいた二人、あっと言う間に、かをる子さんに叩きのめされたかららしい。
北斗君の話によると、葛西たちを見失ったあと、慌てて探しに出たところ、家の方から、誰かが歩いて来るのが見えた。
全く、この状況にはそぐわない、キラキラ輝く服装、軽やかな足取りで。
早速、高性能の双眼鏡を取り出し、その不審人物を確認し始めた島山さん、そのまま動きが止まり、双眼鏡を当てたまま、何も話さなくなった。
結局、二人は、かをる子さんが着くまで、じっとそこに立っていた。
美貌を誇るかをる子さん、あの、超セクシーな鎧姿で島山さんの前に立った。
それも、普段より、近くに寄り添った感じで。
島山さん、そのとき、たぶん、頭の中、真っ白だったんじゃないかと、北斗君。
その島山さんの反応を見て、かをる子さん、ニッと笑い、
「葛西たち、動き出したわよ。
すぐに確保しちゃうから、ついてきて」
といって、山の方に歩き出した。
北斗君、言われるままについて行く。
島山さん、言われたことを理解できたのかどうかわからないが、かをる子さんの、鎧の隙間に、輪郭が見え隠れするプリプリのお尻から、まったく目を離さずに、しっかりとあとをついて行ったそうだ。
かをる子さん、藪の中も平気で分け入って、すぐに葛西たちを見つける。
「ちょっと待っててね」
と言うや、そのままの、軽やかな足取りで、葛西たちの方に歩み寄る。
葛西たち、どう感じたんだか…。
突然、藪の中から現れた、超セクシーな鎧姿の、絶世の美女。
戦闘態勢も何もあったものじゃなかったのかもしれない。
あっと言う間に、3人、倒されていたらしい。
でも、その速さ、並の速さじゃなかったらしい。
北斗君ですら、かをる子さんが、何をどうやったんだかわからなかった。
ただ、おそらく、3人とも、みぞおちを一撃されたんだろうと、あとで、葛西たちが、胸の下の痛みを訴えているところから理解した。
倒れ込んだ3人、まず、北斗君が縛り上げた。
北斗君、どういう目的なんだかわからないんだけれど…おれとしては、すごく、興味あるんだけれど…、日頃、縄で人を縛る方法を美枝ちゃんに教わっているらしく、ある程度はできる。
縛り上げたところで、かをる子さんに言われるまま、体を起こした。
このとき、3人は、まだ、気を失っていた。
すると、かをる子さんが、つま先で、3人の背中を軽く蹴って目覚めさせた。
かをる子さんの、この行動も、よくわからない動作だったと、北斗君。
だって、無造作に…、本当に、石ころでも蹴るように、ポン、ポン、ポンと3人の背中を蹴ると、「う~ん…」と3人の意識が戻ったらしい。
そのとき以来、3人とも、なんだかしょんぼりした感じになってしまって、さらに、身も心もつらそうになって、言われるがままに歩き、おとなしくここまで連れてこられたんだとか。
どうも、かをる子さん、というか、龍神さん、よくわからない。
こんな力があるのなら…、まあ、あるんだろうなとは、納得できるんだけれど…、もっと、簡単に、萱津に入っていた敵を、やっつけることもできたんじゃないかと思う。
そういえば、その敵のこと、かをる子さん、「あの子」と呼んでいた。
しかも、食べたんじゃなくて、わざわざ「取り込んだ」と言い直していた。
その「あの子」との関係、大した話じゃないらしいが、どうも、言いにくそうだ。
さてさて、どんな話になるんだろう。
なんて、考えていたら、たいして時間が経ったとは思わないうちに、警察が来た。
そのあと、バタバタしていて、あやかさんが、かをる子さんに話を聞けたのは、遅い夕食の時。
やはり、言いにくそうで、はっきり聞けたわけじゃないんだけれど、どうも、かをる子さん誕生となる、地下にエネルギーがたまり始めた頃に戻るらしい。
記憶も定かでない、とは言っていたけれど、かをる子さんが形成されていく地下深くの場所に、前からいたのか、もともと、かをる子さんの部分だったのか、それすらよくわからない小さなエネルギーの塊が存在していた。
それを、かをる子さん、何かの加減で、外に押し出してしまったらしい。
その、小さなエネルギーの塊が、たまたま、なんだか、必然なんだかわからないが、地上に出るなり、実にたちの悪い動物に吸収されてしまった。
まあ、かをる子さんに、さらに聞きただすと、本当は、吸収されたのか、自ら入っていったのかはわからないらしいんだけれど、でも、結果的には、萱津の時と同じように、融合してしまった。
動物でも、人間と同じに、いろいろと、たちの悪いのがいるらしく、そういう類いの生き物を、かをる子さんは『穢れている』と言うみたいだ。
そういう動物に宿っていると、エネルギー体にも、穢れの臭いが染みつくようで…、まあ、少し汚れがつく、ということになる。
そうして、その動物が死ぬと…、あるいは、もう、宿る価値がなくなると、エネルギー体は、外に出てくる。
すると、また、新しい寄主を探すことになるようだが、そのとき、自然と、たちの悪いような、かをる子さんの目から見ると、穢れたタイプの動物や人間を、探し、選ぶようになるらしい。
という形で、『敵』のエネルギー体は、徐々に、穢れが強くなっていったんだとか。
そして、この『穢れ』というものが、かをる子さんにとっては異質なもので、どうにも始末できないらしくって、長い間、困っていた…というよりは、諦めていた。
そして、今から600年ほど前に、たまたま出合った神事から、『敵』を浄化する方法に気がついた。
で、浄化できるのなら、浄化してしまってから「取り込んで」、元のようにかどうかはっきりはしないが、一緒になるのが一番いいだろうと、かをる子さんは考えたらしい。
でも、取り込むのって、食べるのと、大して変わらないような気もするんだけれ、まあ、そのことは、あんまり深く追求しなかった。
そこで、かをる子さん、いつ成就するかわからない壮大な計画を立てたわけだが、その中には、妖魔や妖刀、そして妖結晶も組み込まれていた。
そして、600年かかって、あやかさんを中心としたみんなの働きで、無事、目的が達成されたと言うことだった。
ということで、本当に、すべてのトラブルが解決したような感じになって、その夜は、みんなで、ゆっくりと飲むことができました。
朝、早かったんだけれど、夜も遅くまで。
で、おれが、あやかさんに初めて会って、その頃からのドタバタが、1年ちょっとで、やっと終わったということになるわけです。
で、今から、何か、仕事しないといけないんじゃないかと思うんだけれど…、でも、ここで、何ができるのかわからない。
広い敷地の管理作業でもいいんだけれど…。
今、美枝ちゃんに、仕事、探してもらっています。
ということで、この話、今は、ここまでかな?
おれの人生、これからもあやかさんと楽しく暮らしていくんだけれど、でもね、このあとも、かをる子さんがらみでいろいろあったんですよ。
また、サッちゃんはサッちゃんで、しっかりしているようで、なにげに動きが面白くって…、たとえば、浪江君の体力不足を心配して、走るのに連れ出して…、そう、そして、十年という歳月が経つと、いつの間にか…だったりとか。
でも、そんな話は、またいつか、別の時でいいかな。
ここまで、お付き合い下さり、ありがとうございました。
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終わりまで、読んで下さり、ありがとうございました。
次は…、どうするのか、まだ、決めておりません。
始めたばかりのブログも、ストレスが多く、もう、やめてしまいました。
今後、新しい小説を書くかもしれません。
とはいえ、この小説で、気になることが残っていて…。
それは、龍平に『おれは…』なんてしゃべらせてスタートしたので、途中から、書きにくくなってしまったことです。
例えば、龍神さんの出番が、うんと遅くなってしまったことなども、それに関係します。
だって、そのときは龍神さん、こっそりと現れていて龍平は気が付かず…、で、龍平が気づかないことって、書きにくいじゃないですか。
また、のどかな性格なので、危機感を感じないんだか、あるいは表現するのがちょっと足りないのか…、まあ、戦いの迫力が出ないんですよね。
あとで工夫して…なんてそのときは、脇に置いておくと、いつの間にか忘れて、タイミングを逸したりとか、なんとか、なんですよ。
アヤさんなど、昔のことなら、別の書き方で入れてみたりはしたんですけれどね。
で、次は、『龍平は、しっかりと握りしめている右手を…』なんて書き方で、もう一度書いてみようかとも、ですから、リニューアル版を書いてみようかなどとも考えています。
ただ、小説って、書き出すと、勝手に、別の道に行っちゃって、ストーリーが変わってしまうこともあるので、もし、書き直しを連載し始めて、また、それを読んで下さる場合には、同じ内容でなかったとしても、勘弁して下さい…なんだか、変わりそうな気もするので…。
書き出したら、これの続きとして公開し、お知らせします。
その場合でも、ひと月かふた月くらい…あるいは、それ以上かかるかもしれません。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
龍神さん、お目覚めの時ですよ:妖魔神伝--紅眼の巫女--4 ごとう有一 @yufu
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