主人公の龍平は、近く(17センチ3ミリ)の物体を手の中に瞬間移動させる事が出来る特殊な超能力を持っていた。
ある時友人からデパートの宝石売り場に物凄い美人の店員さんがいると言われ、興味本位で見に行った所、手違いでうっかり能力を発動させて宝石を盗み取ってしまう。
しかしそれを例の美人店員さんに目撃されており、彼女から呼び止められてしまう。しかし彼女はそれを糾弾する訳でもなく、逆にその能力に興味を持ち、龍平にある誘いを持ち掛ける――
このような導入から始まる本作は、異世界などに転生しなくても、自分を取り巻く世界が変化し、非日常の世界へ足を踏み入れていくワクワク感は作れるのだという事を教えてくれます。
独特の文体と主人公の視点で語られる物語は軽妙で味があり、また主人公の能力を解析していく下りでは、作者ならではの面白い発想が垣間見れます。
こういう現代ファンタジーがもっと増えて欲しい。そう思わせてくれる作品です。