僕の親友と僕の夢

アカト

僕の親友と僕の夢

僕は柊匠ひいらぎたくみ二十九歳。


僕には五年間付き合った彼女、長崎麻衣ながさきまいがいた。


毎日必ず会うほど仲は良かった。でも彼女は自分で命を捨ててしまった。


僕は彼女を救えなかった。彼女のSOSに気付いてあげられなかった。


僕は自分を恨んだ。だがいくら自分を恨んでも彼女は帰ってこなかった。


だが僕には親友と呼べる人がいる。


橘涼太たちばなりょうた、僕の唯一無二の親友だ。


「また自分を責めてるの? 麻衣ちゃんはそんなこと望まないよ」


涼太に図星を指されて何も言えなかった。


「まあ自分を責める気持ちは分かるがお前も前に進まなきゃ麻衣ちゃんが安心出来ないよ」


「そうだよね。僕も少し頑張らないとな」


僕は麻衣のためにも前に進む決意をした。


『助けてあがられなくてゴメンね。僕は麻衣の分まで頑張って生きるよ。だから安心して成仏してね』


涼太が僕のそばにいてくれて本当に助かっている。


僕は彼女が亡くなって後追い自殺も考えた。

だが涼太が僕のそばにいてくれていつも励ましてくれた。

 

「涼太いつもありがとね。本当に涼太には救われて助けられてるよ」


僕は涼太に本当に感謝の気持ちを伝えた。


「いきなりどうしたんだよ。なんかこそばゆいな。でも感謝の気持ちはしっかり伝わったよ。ありがとう」


涼太は照れながら感謝の気持ちを受け取ってくれた。


麻衣が亡くなってから僕はずっと考えていた。人は一人では生きていけない。だから友達を求め恋人を作ろうとするんだと。


僕には涼太という支えがいて一人ではなかった。それがどれだけ幸せなことなのか彼女を亡くして初めて気づいた。


だからこそ僕は涼太に感謝の気持ちを伝えずにはいられなかった。


麻衣とって僕が支えにならなくちゃいけなかった。麻衣も親友は何人かいたと思う。でも僕が麻衣にとっての一番の支えにならなくてはいけなかった。


だからこそ僕は今、小説家を目指している。小説家になって僕と同じ辛い思いをする人、麻衣のように自殺を考えてる人を少しでも減らすために僕は小説を書きたいと思った。


涼太も僕が小説家になりたいと言ったら応援してくれた。僕は寝る間も惜しんで小説を書いた。だがそんな無理がずっと続くわけもなく僕は体調を崩してしまった。


そんな時、涼太が家にきておかゆを作ったりして看病してくれた。


「頑張るのはいいけど体壊してたら話にならないよ。何をするにも体が資本だからね」


涼太は僕に言った。


「それは分かっているんだけどね。なんか焦っちゃって。早く小説を書きあげて結果を出したくて」


「気持ちは分かるけど焦っても良い小説は書けないんじゃないかな? 君の焦りや辛さが読んでる側にも伝わっちゃうんじゃないかな?」


涼太の正論に僕は返す言葉が見つからなかった。


「焦る必要はないよ。自分のペースで小説を書けばいいと思うよ。大丈夫だよ。君ならいい小説が書けるって思ってるから。だから焦ってまた体壊すのはダメだよ」


涼太は僕を励ましてくれた。


涼太は本当に面倒見がいいので僕は本当に助かっていた。


「僕はいつも涼太に助けてもらってばかりいるね。いつか恩返しできるように頑張るからね」


僕がそう言うと涼太は。


「俺たちは親友なんだからそんなこと気にすること無いんだよ。お前はそういう所、気にするよな。でもその気持ちだけで充分だよ」


涼太はホント良いやつだ。僕は涼太と親友になれたことが本当に宝物だと思っていた。


「僕、絶対に小説家になって僕みたいに辛い思いをしても生きていけることを証明したいって改めて思った」


僕がそう言うと涼太は


「無理だけはするなよ。俺もお前の夢が叶うこと祈ってる。きっと麻衣ちゃんも俺と同じだと思う。天国でお前の活躍を願ってるはずだからお前はお前にしか書けない小説を書けるはずだよ」


それからも僕は麻衣の事を忘れないためにも涼太の応援を無駄にしないためにも小説を書いていた。


掌編小説から書いていって徐々に短編小説、長編小説とと文字数を増やしていき僕は少しずつ自信をつけていった。


書いてるうちに小説を書くのが面白くなって六作目の長編小説で書籍化が決まりプロの作家になった。


僕はたくさんの人に支えてもらいながら精一杯生きている。だが僕はそれがダメなことだとは思わない。人は誰しも誰かに支えてもらいながら生きている。人は一人では生きられないのだから。だから僕は支えてくれてる人に感謝をしっかりして生き続ける。

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