文字と文字の隙間から滲み出るホラーの空気

 言葉選びやリズムの取り方が非常に上手く、サクラという少年が尋常のものではないこと、順一くんにこれから起こるのだろう決して手放しで喜ぶだけにはならないだろう何がしかが、暗示されるような、手触りのいい文章でした。
 このですね、文章の雰囲気でジャンルを分からせるという技術は強い。物語が始まって状況が揃っていって、ようやく世界のリアリティラインが定まる、そういう手順をすっ飛ばして、「これからホラーをはじめます」という空気が文字と文字の隙間から滲み出している。それもただ怖いだけのホラーではないというところまで察せられる話運びと合わせて、非常に上手いと思いました。

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山桜の怪

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