第47話 惑星の命
天使サイラはミルク神と並び立って地球を見下ろしている。
宇宙船ミルキー号は地球の遥か上空の衛星軌道にいた。
ミルクが言う。
「少しだけ、地球が青さを取り戻しましたね」
サイラが答える。
「はい。地球時間で10年程すれば、北と南の白い部分が広がって、元に戻ってくると思います」
「次の恒星の周りを見に行きますよ」
ミルクがそう言うと、宇宙船ミルキー号は太陽系から姿を消した。
次にミルキー号が現れた先には、太陽と同じような大きさの恒星が輝き、その周りには12の惑星が同一方向に公転している。
ミルク神は、その惑星の中で恒星から3番目と4番目に近い惑星に生命の種を植えていた。
3番目の惑星に近づいた。
衛星軌道に乗る。
地球と同じように、恒星の光を受けて青く輝いている。重力によって水とガスが惑星に留まっている。
そのガスは窒素を主とし、酸素を21%含んでいる。
地球を包んでいるのと殆んど同じガスだ。地上は多種多様な生命に溢れていた。
12人の天使達はミルク神の周りに集まっていた。
ミルクが言う。
「この惑星にも私達と同じように作った生き物がいましたよね?・・・さっきの『日本』と言われていた所と同じ場所を見てみましょう」
ミルキー号は、瞬間的に惑星の衛星軌道上を移動した。
日本によく似た地形を見つけ、上空で制止する。
ミルク神と12人の天使達は地上を見下ろした。
其処ではミルク神や天使達に似た、数えきれない程の動物が刃物を持って殺し合っていた。
旗を持ち、四つ足の動物に乗っている者もいる。
ミルク神が天使達に言う。
「ここでは、同じような顔が殺し合っているのか・・・あそこは何と呼ばれている場所なんですか?」
前回、メシアを送った天使の1人が前に出て言う。
「あの者達は『関ヶ原』と読んでいます。彼らの時代が大きく変わろうとしている様です」
ミルク神は大きく溜め息をついた。
「まあ、さっきの地球といい、生物達は進化の途中だから仕方ないが・・・ひとつの生物に、ちょっとマシな知恵を与えると、何処でも勘違いするな。他の生物の面倒を見させる為に知恵を与えられたのが分かっていない。ただ他を支配して、同じ種の中で自分が一番になろうとする。しかも他の種が無くなろうとしても気にも掛けない」
担当した天使が言う。
「少し、待ってやって下さい。あそこは、さっきの地球という惑星よりは少しまともで、あの種の動物は惑星中で同じ言葉を使っています。ミルク様に近づこうとして、高い塔など作ろうとはしなかったですから」
「そう言えば、さっきの地球の人間は高い塔を作れば私に手が届くと思っていたな。なんと言ったかな、あの塔は」
「彼らは『バベルの塔』と呼んでいました」
「そうだった。本当に私を敬っている者同士以外は、罰として言葉を通じなくしたんだったな」
「はい、その通りで。ここの惑星では、言葉を持つ者同士は地球よりも意志の疎通が簡単に出来ますので、惑星の事を思い遣る事が、地球よりも早く出来ると思われます」
ミルク神は言った。
「さっきの地球よりも汚れが目立ったら、あの惑星は潰します。次を見に行きますよ」
惑星の命は神の手中にあった。
宇宙船ミルキー号が消えた。
その頃地球では・・・千葉県の九十九里浜を、赤ん坊を抱いた沢田とイザベルが歩いていた。
隣にはシロがいる。
赤ん坊の顔は、幸運な事に眉毛以外は沢田には似ておらず、母親のイザベル似の女の子だった。
隣を歩いているシロが言う。
「お前は、まだ歩けないのか?」
「私はまだ生まれて3ヶ月しか経っていないんだよ。犬と一緒にしないでよ」
「本当に人間は面倒くさいな。早く一緒に走ろうよ」
「待っててよ。私はパパから力を貰ってるから、シロくんより早く走れるようになるからね」
「ふーん。楽しみだな」
シロと赤ん坊の会話を聞いて、沢田は笑っていた。『なに?』と聞くイザベルに2人の会話を教える。
イザベルは笑いながら走り出した。
シロに叫ぶ。
「私と競争しよう!」
「ワン!」
尻尾を振りながらシロが追いかけて行った。
『完』
還暦スーパーマン 北条誠 @makoto0822
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます