青列車の秘密

1928年にアガサ・クリスティーが「青列車の秘密」を執筆した頃、この路線と目的地リビエラのロマンあふれる雰囲気は有名だった。

リベエラへのルートはローマ急行の一部だった。アルプス山脈を抜ける鉄道トンネルが完成すると、ローマへ向かう寝台車とカレー地中海急行の2つの路線に分かれる。

異国情緒あふれるオリエント急行で成功を収めた国際寝台車会社は1922年に青列車をカレー・地中海急行に導入した。


「青列車の秘密」


南フランスのリビエラに向かおうと、ポワロは豪華列車、ブルートレインを予約した。

しかし、出発前の前日、ロンドンのホテルで列車に同乗する乗客と出会い、ルース・ケタリングの誕生日パーティに招待された。

ルースの父、ルーファスは娘を溺愛しており誕生日プレゼントに「炎のハート」をよういしていた。


「ダイヤよりも眩く、血よりも赤い。


数世紀に渡る情熱と複製にとりつかれた石。


裏切りや殺人が、この石を有名にしました」


ポワロはホテルのレストランで、キャサリン・グレイと知り合う。

最近、雇い主が亡くなり、その遺産を相続してお金持ちの仲間入りをしたばかりだった。

彼女は、これまで疎遠だった従姉妹のロージー・タンプリンに招かれ、フランスのニースに行くためブルートレインの予約をいれていた。

ポワロは叔父さんがわりに彼女を見守る事にする。

おなじく青列車にのるルースは、三等車に乗る不倫相手と密会する約束をしていたが、夫に出くわす危険もあった。莫大な借金を抱えている夫は、義父からの手切れ金を受け取ろうとしない。

彼はルースとの結婚生活を建て直そうとしてたのだ。

翌日、ポワロがカレー駅で青列車に乗車するとタンプリン家の3人が駆け込んでくる。

ラウンジでポワロを待ってるキャサリンにルースが、世間では父の仕業と噂されている母の失踪について語った後、恋人と密会するため部屋を交換したいと話してきた。キャサリンは同意し直ちに荷物が入れ替えられる。


そのあと、ポワロがキャサリンの部屋を訪ねると、彼女は涙ぐんでいた。

ポワロが心配するとルーファスのせいで父親が自殺をし破産に追い込まれた事をうちあける。


列車がマルセイユの駅を出発する直前、ポワロはガラスが割れる音で目が覚める。


そして3時間後、列車がニースに到着すると「キャサリンが」と大声がきこえてくる。

ポワロが確認にいくとキャサリンは無事だったが、顔の識別ができないほど頭を叩き潰されていたルースの死体が横たわっていた。


現場検証すると、割れたシャンパンの瓶、夕食がのった盆の下敷きになった壊れた鏡。こじ開けられた形跡もなく解錠された金庫があり、中にあった「炎のハート」は消えていた。


さらにポワロは長い髪1本、ゴミ箱にあった手紙を一通。そしてライターを見つけていた。


事件発生時に全員のアリバイは立証されている。が、それぞれが誰かに疑いの目を向けている。


ルースの母親の失踪や、理解できないねじれた糸が張り巡らされているものの、エルキュール・ポワロは殺人犯の手がかりを見つけていた。

これからその痕跡を辿って、秩序と方法を武器にして、ポワロは事件の背後に潜む恐るべき知能犯の罪を暴かなければならなかった。


叔父さんとして、親しい友人を守るために、ポワロは事件を解決するのだった。


事件解決後、キャサリンはオリエント急行に乗って旅を続けると打ち明けられて寂しそうな素振りを見せるが、いつか自分もオリエント急行に乗って旅をしたいと心に決めたのだった。


破産しても楽しく生きるタンプリン一家。

愛の表現を誤り、すべてを失ったルーファス。

金のためにルースを利用する愛人。

借金を背負い崖っぷちになりながらも、裏切りつづけた妻を愛しとおした夫。

不貞の証拠をでっちあげるため、誘惑を強要された愛人。

そして・・・


様々な想いが交錯する物語の中に様々な愛憎が絡み合っていく。


愛する人を守るために。

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