分かりやすい「いい人」は出て来ない。でも、、、

いつも笑顔で誰にでも優しく、裏表がない。
そんな分かりやすい「いい人」は、殆ど出て来ません。「いい人」という言葉の範疇に収まる人が存在しない、と表現する方が適切かもしれません。

『Dead man’s hand(デッドマンズハンド)D.M.H.』には登場人物の心の多面性が、これでもかと言うほど克明に描き出されています。尚且つ「人間、誰しもいい面と悪い面がある」などと安易にメッセージをぶつけて来ることもありません。善悪の勘定を読者に委ねている点が素晴らしいです。
「格好良く成長する主人公」や「可愛いヒロイン」といった単純明快な枠組みは、すぐに打ち砕かれるのではないかと思います。きっと各登場人物への評価は二転三転します。
淡々としていながら、確かな熱を持ってこちらに迫って来る三人称の語り口が独特です。

パッと見は、怪異を物理でブッ飛ばすパワフルな悪霊退治ものです。エンタメ性を追求した展開の隙間に挿し込まれた心理描写を、より多くの方々に楽しんで頂きたいです。

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