とある魔女の告白


死にたい、と思った。

この身が消えて誰かが不幸から救われるなら、どれほどいいか。誰にも望まれない命ならどれほどいいか。


認められたいと、望まれたいと思いながら、

私は自分の死を望む。


どうか誰も傷つかず、

幸せな日々に帰れますように。




⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·




呪いをかけた。自分に。

解きようのない呪いだった。

かけた本人に解く気がないのだから。


真実の愛のキス、などという、どんな呪いも解いてしまう馬鹿げた代物も存在するらしいが、私の呪いにそんなものは関係ない。


私の呪いは、真実の愛なんてものを近付けないためのものなのだ。誰も私を愛さない、呪い。


愛されなくていい、愛してしまうから。

近い距離なんて必要ない。離れて傷つくくらいならひとりでいい。


これは保身だった。自分が愛されないことへの理由付けだった。

愛されるような心も、身体も、持ち合わせていない自分が、ひとりでいることを正当化するための。


呪いのせいだと言い張りたかった。

遠ざけているだけで、自分にも愛される資格があるのだと思いたかったのだ。


いつだって、愛される価値などないと

自覚していたのに。




⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·




思えば、他人に不幸を押し付ける人生だった。


不幸の運命に生まれながら、自分自身にこれといって大きな不幸が降りかかった記憶が無い。


その代わり、私の周囲にはたくさんの不幸がころがっていた。他人がそれに躓いているのを、私はただ見ているしかできなかった。


思えば、他人に不幸を押し付ける人生だったのだ。



私の不幸は、自分が不幸になれないことだった。




⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·




「以下、余白」のような時間を過ごしている。



たくさんの人と出会って、たくさんのことを成して、

謝罪も感謝も罵声も浴びて。


友も愛も希望も絶望も失って。



今の私に何が残っているのだろうか。




____以下、余白。

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詩・散文・その他 硝子の海底 @_sakihaya

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