第3話
「さぁ、サッサと剣を取れ。
私の婚約者と言うのならば、貴族としての矜持を見せてみろ。
ろくに剣も振れず、どうやって陛下に剣を捧げたのだ!
そのような軟弱者が、多くの貴族の父親になるだと?
恥を知れ、恥を!」
「ひぃぃぃぃ。
狂人じゃ。
鬼じゃ。
鬼令嬢じゃ!
こんな女と契るのは御免じゃ。
破棄じゃ。
婚約は破棄じゃ!」
私の婚約者だと言うキャリスブルック侯爵アイザック卿は、恥知らずにも、多重結婚相手や多くの婚約者の間を巡るのに、旅をしていると言うのです。
しかも訪れた貴族領で、酒池肉林の接待を要求すると聞きました。
そんな腐った奴と契るなど、絶対に嫌です。
だから叩きのめしてやりました!
本当のキャリスブルック侯爵ならば、国王陛下に剣を捧げた証拠を見せろと、無理矢理剣を取らせて模擬試合を相手をさせて、徹底的に叩きのめしてやりました。
情けない事に、過去に一度も剣の練習をしたことがないのでしょう。
全くなっていませんでした。
まともに足も動かず、剣を振り上げる事すらままならないようでした。
そんな軟弱糞野郎でも、貴族の血が流れているからと、種馬扱いで下にも置かない優遇をされるのです。
全く不公平な話です。
我慢なりません。
だからキャリスブルック侯爵から婚約を破棄してくれて助かりました。
「ハワード侯爵。
キャリスブルック侯爵が婚約破棄を宣言したぞ。
これで私は自由だ。
私は私の婚約者は自分で決める!
私の婚約者はマイケルだ。
それを認めないのなら、私は出て行く」
「領地を治めたかったのではないのか?
婿を取れば統治に嘴を入れてくるぞ。
キャリスブルック侯爵なら、金さえ渡しておけば、統治にまでは介入せんぞ」
「マイケルを馬鹿にしているのか!
マイケルは単騎で複数の魔獣を狩れる猛者だ。
キャリスブルック侯爵のように金を渡す必要などない。
魔獣の魔石と素材を売って、莫大な富を自力で手に入れている。
キャリスブルック侯爵のように、渡す金を作るために、領民に負担をかける必要もない」
「ふぅ。
キャリスブルック侯爵を酔い潰れさせて契った事にして、マイケルの子を産む。
それくらいの腹芸が出来んのか?
それでハワード侯爵家の当主が務まると思っているのか⁈。
ハワード侯爵家を護っていけると思っているのか!」
「なるほど。
侯爵も伊達に歳はとっていないようですね。
だが貴族のやり方は、私には汚く感じられる。
そのようなやり方は趣味に合わない。
ハワード侯爵家は私の剣で護る!」
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