侯爵令嬢が婚約破棄されて、祖父の傭兵団長が激怒した。
克全
第1話
私は本来このような地位に就くはずではなかったのです。
祖父が運営する傭兵団に加わり、一隊を率いるはずだったのです。
それが侯爵家の令嬢に迎えられることになったのは、男死病の所為です。
男死病と言っても、男だけが死んでしまう訳ではありません。
死者十人の内九人が男と言うだけです。
大陸を席巻した男死病の所為で、大陸に人口は十分の一になってしまいました。
男死病は身分に関係なく、公平に天国に連れて行きます
上は王族から下は奴隷まで、多くの人が亡くなりました。
国力が著しく低下しましたが、それは大陸のどの国も同じでした。
混乱に付け込んで隣国に攻め込める国は何処にもありませんでした。
祖父の運営する傭兵団も、多くの男手を失いました。
ですが男手がなくなった分、寡婦や未婚の女が溢れました。
そんな女の中には、生きていくために祖父の傭兵団に加わる者もいました。
国同士の戦いがなくなっても、何か収入源を見つけて傭兵団を維持しなければ、そんな者たちが路頭に迷うことになります。
路頭に迷う者を喰わせていかなければ、その者達は盗賊になってしまいます。
そんな事には絶対させられないのです。
だから祖父は、率先して獣や魔獣を狩る事にしたのです。
男死病から生き残った祖父をはじめとする傭兵団員なら、例え相手が魔獣であろうとも、簡単に狩る事が出来ます。
そんな歴戦の猛者達と共に、祖父を頼って集まる女達を鍛え、傭兵団を盛り立てていた私の元に、祖父の甥と言う老齢のハワード侯爵ウィリアム卿が使者を送ってきたのです。
ハワード侯爵の話も、この御時世の御多分に洩れず、一族が死に絶えてしまいそうだと言う話でした。
早い話が、家が絶えるから帰って来てくれという話です。
祖父に言わせれば、今更の話です。
祖父はハワード侯爵の父親の末弟なのです。
祖父の父親である先々代のハワード侯爵はとても好色だったそうです。
祖父は母親の身分が低かった上に、十八番目の庶子だったので、ろくな資金も与えられず、ハワード侯爵家を放り出されたそうです。
そんなハワード侯爵家が潰れようと、祖父は何の痛痒も感じないと言いました。
だから私も妹も、ハワード侯爵家に行く気などありませんでした。
ですが傭兵団の中に、ハワード侯爵領から逃げて来た娘がいました。
彼女の話を聞くと、ハワード侯爵領は税が高く、領民は喰うや喰わずの苦しい生活だと言うのです。
だから私がハワード侯爵家に養女に入ることになりました。
私がハワード侯爵家を継いで、領民を助ける事にしたのです!
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