第7話

「仕方あるまい。

 王都に攻め込んで、王家を滅ぼすぞ」


「はぁ~。

 それで私はどうなるのです。

 私を殺して、グレイスを女王に戴冠させるのですか?

 それとも叔父上が戴冠されるのですか?」


 ウィリアムが投げやりになっています。

 それも仕方がないでしょう。

 祖父が王家打倒を決意したのですから。

 自分が殺されるかもしれないと思っているのでしょう。

 いや、思っていないからこそ、この発言ですね。


 そもそも王家が馬鹿なのです。

 バイオレット馬鹿王女が私とマイケルの婚約を否定しても、ベンジャミン王が叱責して認めれば、ハワード侯爵家と敵対することはなかったのです。

 そうしていれば、祖父の傭兵団と敵対する事もなかったのです。


 それを愚王は、王の権限で私とマイケルの婚約を無効としたのです。

 体裁を整えたいのなら、ハワード侯爵家からマイケルに婚約破棄を通告すればいいと、偉そうに貴族の取るべき態度を教えるかのように、使者に口状させたのです。

 それだけでなく、マイケルと婚約したければ、ハワード侯爵家から出て行けとまで通告してきたのです。


 祖父が大激怒しました。


 国内の全貴族士族に今回の件を詳しく伝え、王家打倒を宣言しました。

 更に王家に味方するなら、一族一門皆殺しにすると宣言しました。

 そしてアバコーン王国内に留まらず、アバコーン王国に領地を接する全ての国の王家と貴族士族にも通達したのです。


「お前ももう歳だ、天寿を全うするまで初代王を名乗るがいい。

 跡はグレイスが継げばいい」


「叔父上やイヴリンはどうされるのですか?」


「俺は傭兵団長だ。

 まあ、後の世では傭兵王だとか健国王だとか呼ばれるだろうよ。

 それは世間が勝手に言う事だ。

 イヴリンも女王になりたかったら、適当な国を攻め取るだろうよ」


 祖父と母らしい考えです。

 元々面倒な事が嫌いな、豪放磊落な祖父と母です。

 国を攻め取るのは簡単でも、後々王として統治するのが面倒なのでしょう。

 私も正直嫌ですが、傭兵団員として、占領地の治安維持や補給はいつもやっていましたから、絶対無理と言う訳ではないでしょう。


★★★★★


 王城は簡単に攻め落とせました。

 ベンジャミン王が悪政を行っていたようで、我々が王城を取り囲んだら、王都の民が蜂起して城門を開き迎え入れてくれました。

 残虐な行為は嫌いだったので、王女や女官を暴行したりはしませんでしたが、不正や悪事を重ねていたので、普通に石打刑にして、王都の民の鬱憤晴らしにしました。


 グレイスが初代王を名乗り、私が王太女、妹のエレノアが第二王女と成りました。

 祖父が建国王と称され、母が国母と称されました。

 グレイスが気を使ってくれたのでしょう。


 そうそう、種馬のキャリスブルック侯爵一行ですが、国外追放にしてやりましたが、貴族の血を尊ぶ国を回って、御機嫌にやっているそうです。

 ハワード王国は女系継承にしたので、どの貴族士族も安心して屈強な男の種や賢者の種を求めているそうです。


 ただ、男が激減しているので、逆ハーレムは厳しく禁止しました。

 男は女の共有財産なのですから、独占はいけません。

 だからマイケルにも好きにさせています。

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侯爵令嬢が婚約破棄されて、祖父の傭兵団長が激怒した。 克全 @dokatu

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