第6話

「認めぬぞ。

 下々の血を高貴な貴族社会にいれるなど、絶対に認めぬ!」


 私とマイケルを披露する大々的な婚約披露宴で、王女のバイオレットが私とマイケルの事を否定しました。


「しかし殿下。

 それを言ってしまうと、殿下も王女の資格がないのではありませんか。

 殿下は王家の直系が老齢な当代様だけになってしまったから、急遽養女に迎えられた傍流も傍流ではありませんか!」


「何だと、この無礼者が!」


 殿下が手を挙げて殴りかかってきましたが、女子供の細腕に殴られる私ではありません。

 最初はヒラリヒラリとかわすだけに留めていましたが、だんだん腹が立ってきて、最後には思いっきり平手打ちを喰らわしてやりました。


「何をする!

 この無礼者が!

 認めぬぞ。

 絶対に認めぬ、

 王女として命じる。

 その方とマイケルの婚約は認めぬ。

 婚約は破棄じゃ!」


「ほう。

 ならばハワード侯爵家は独立させてもらおう。

 ろくに王家の血も流れていないバイオレット王女に偉そうにされたり、ハワード侯爵家の結婚に口出しさせたりする気はない。

 既にアナンデール王家にはこの結婚を認めてもらっている」


 なんと、祖父はハワード侯爵家と領地を接するアナンデール王国と話を通してくれていました。

 流石百戦錬磨の団長殿です。

 長年の傭兵生活で、各国に繋がりがあるのです。


 これでようやくウィリアムの態度が激変した事が分かりました。

 ウィリアムは祖父に脅迫されたのでしょう。

 もし私の婚約を認めなければ、ウィリアムを殺して無理矢理にでも私を当主に就けると。


 今のこの世界で、祖父ほど強大な戦力を持っている者はいません。

 祖父が全戦力を率いて攻め込めば、この国もアナンデール王国も簡単に占領されてしまうでしょう。

 ましてハワード侯爵家の諸侯軍など一捻りです。


「おのれ!

 許さぬ。

 この者は謀叛を宣言したぞ。

 皆の者許すな。

 この場で討ち取るのじゃ!」


 馬鹿です。

 大馬鹿者です。

 混乱する世の中で、次々と王家の血縁が死に、甘やかされて育ったのでしょう。

 多少の知恵がある者なら、招待された家の状況は調べています。


 まあ、こんな世の中だから、どの貴族家も力を失っていて、諜報能力も激減していますから、調べ切れない家も多いかもしれません。

 でも、だからこそ、少しでも血の繋がる家と協力して、情報の共有をしている。

 私が養女に入る前のハワード侯爵家も同じだったでしょう。


 だから今迄世話になって来た貴族士族家には、祖父の傭兵団の情報を流していた。

 ハワード侯爵家の戦力見積もりを誤った貴族が、逼迫する財政を立て直すために、戦争を吹っ掛けてこないようにです。

 私も祖父も、弱い者虐めが嫌いなのだ。


 

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