第4話

 キャリスブルック侯爵一行を叩きのめして追い出した。

 配下の女騎士や戦闘侍女が、コテンパンに叩きのめして追い出した。

 言い忘れていたが、キャリスブルック侯爵一行は男ばかりだ。

 男死病で九割の男が死んでしまったので、色々と不味いことになっている。

 寡婦や未婚の女性の中には、寂しい思いをしている者も多い。


 確かに子孫を残すと言う意味では大問題だ。

 だが生き残った男には天国だった。

 いや、見方を変えれば地獄なのかもしれない。

 ただ働きたくない男には天国なのだろう。

 キャリスブルック侯爵一行の男は、種馬として巡行をしているのだ。


 寂しさを埋めたい女や子供を望む女から、金品を取って種馬になっている。

 女の弱みに付け込む卑怯者達だ。

 気に食わない。

 全くもって気に食わない。

 だから配下の者達と一緒に叩きのめしてやった。


 だが、必要なのも分かっていた。

 領内の村は、ほとんど閉じた環境で暮らしている。

 自給自足で暮らしていて、年に数回商人が来るくらいだ。

 男死病流行前でもそうだったのだ。

 そんな状態で、男の九割が死んだのだ。


 いまは税金を納める時くらいしか、村外から人が来る事はない。

 村の子供の父親が、ほとんど同じ男になる可能性がある。

 恐ろしく血が濃くなる。

 血が濃くなると、子供に障害が出てしまうのは、ある王家の乱行で皆が知る所だ。

 それを、貴族の父親をほとんどキャリスブルック侯爵にするなど、狂気の沙汰でしかない。


 まあ、養父殿の言うように、多くの貴族家では、表向きの父親がキャリスブルック侯爵で、本当の父親が愛人なのだろう。

 貴族の本音と建前なのだろうが、馬鹿馬鹿しい!

 貴族ならば堂々とするべきなのだ。

 例え元奴隷であろうと、優秀ならば婿に向かえればいいのだ。


 以前配下の傭兵から聞いた、戸籍と言うモノを作らなければならない。

 血が濃くなり過ぎないように、両親を記した記録を作り、次世代の子作りを健全にしないと、領内に障害のある子が溢れてしまうかもしれない。

 今のハワード侯爵家には、いや、アバコーン王国に障害のある子を養う余力などないのだから。

 

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