第16話
カポーンっと陽気な音が響そうな大きな風呂に浸かっている堂真は頭にタオルを乗せてのんびりとしていた。
朝起きた時に菜々にお腹に突撃された時に服に付いたアルコールの匂いがキツイのか菜々はしかめ面で臭いと一言言葉を残した。
近くに居るメイドと目が合うとお風呂にどうぞと案内され今に至ると言う事だ。
それほどまで匂っていた事なのだろう。
久しぶりにゆったりと入れた風呂に満足した堂真は軽い足取りで冒険者ギルドに向かう。
屋敷を出る時に金治から近いうちに用事があるから塔に行かないでほしいとお願いされたので今日は、集まった魔石を換金と頑鉄の所に遊びに行こうとする。
賑わっているギルドの正面玄関に着くと、堂真に視線が一気に集まる事を感じると、周りから人がすごい勢いで集まり始める。
カメラを持った者やマイクを堂真に向けて質問してくる者とマスコミの取材に遭遇してしまう。
本人も何故こういった騒ぎになっているかは知っている。
引き延ばした結果毎日こそこそと生活をしなければならないのなら、今のうちに受け答えをする事によって今後絡まないでほしいと思ったからである。
「赤崎 堂真さんですか? 私は帝国テレビの東(あずま) 鈴(りん)と言います」
「えぇ、よろしく」
青色の髪を後ろで束ね、爽やかなイメージを持つことが出来る。
くりっとした瞳の前には目が悪いのかメガネを付けており、小さい物を見ると少し目が細くなる。
「早速ですが、信雄選手と戦った事なのですが、出来レースと言う話が上がっていますが、本当なのでしょうか?」
何故こうった話が上がっているのかと言うと、信雄と堂真のレベル差があまりにも開きすぎていると事、いくら油断していても一撃で倒せないと判断されたためである。
そして堂真は京花と言う公爵家が後ろに居る事に圧をかけたのではないかと言う話も上がっている。
この事を信雄に取材しに行った時には本人はそう言った行為は無かったと断言しているが、圧が掛っているのであれば言えないのでは判断されたのである。
その後、信雄は油断をしていなくても私は負けていたと言っていたが、格下に負けたショックで気分が落ちているのだろうと世間では言われている。
「出来レースですか? 見たままが答えと思ってくれれば良いですよ。他人が出来レースと思うならそれでもいいし、実力で勝ち取ったと思うならそれでもいい。俺は学生でも何でもない一般人だ。俺はさっさとあの塔の最上階まで行かないといけないので、こんな小さな事を気にしている暇はない」
塔の最上階と聞いて他のレポータは大きく言うねと言う様に笑い合っている。
その中で驚きは隠せないが、決して笑ったりしていない鈴は良い印象を持てる。
「塔の最上階ですか? 確かに冒険者としてロマンはありますが、堂真さんはパーティーを未だ組まれていませんよね? 30階まで一人でそこからは、公爵家の京花様と二人で攻略を始めた事に意味はありますか?」
色々自分達の事を調べているのかと思うった。
「そうですね。京花は現在聖騎士の職にクラスチェンジしていましてね。俺の職業の相性にいいのですよ。自分の職は火力職なので壁役は必要になりますからね」
公爵家の令嬢を壁役に使うと言う堂真の一言でまた周囲はざわめく。
まぁそもそも女性で壁役をする者は少ない。
一番危険な職である理由である。壁が崩壊すればパーティーは全滅すると言われる程、大事な職業である。
それはその人の感情であるので堂真が何かを思う必要は無いが、京花が壁役をしている事に可哀想などと上がる声にはイライラが募る。
京花の気持ちも考えずに言葉を並べるテレビ局に堂真はもう何も言う事は無いと判断する。
鈴にはまた今度と耳元で囁くとギルド内に入って行く。
「堂真さんも注目を集め始めましたね!」
受付をしていた香が話しかけてくる。
「この程度で騒がれるとは思わなかったがな、それより昨日はすまなかった。屋敷の方まで送ってくれたみたいで」
結構な量を飲んでいた堂真は昨日の記憶があいまいところが多い。
家に帰って来た記憶はほとんど残っていなかった。
「いえいえ、大丈夫ですよ? また誘ってくださいね」
「あぁ。お詫びを兼ねて、また誘うとするよ」
「ありがとうございます。それでは本日のご用件をお伺いしますよ」
話が終わるとすぐに仕事の対応をしてくれるが、今堂真は時に何かをしに来たわけでは無かった。
「いや、今日は特にする事が無くてね。暇つぶしにうろうろとね」
「それなら今広場で前線組がモニターに映っているのを見る事もいいですが、京花様が通っている学園に行ってみてはどうですか? 今は学校で校内ランク戦が始まっているので、闘技場であれば一般客も入れますよ」
年に3回学校でランク戦が行われて、日々精進した者達が自分の実力を出し切って戦うのだ。
ランキングはそのランク戦の間にしか変動はしないので皆のやる気は十分である。
皆上をめざし必死である。
「へぇ~ それは面白そうだ」
いい事を聞いた堂真は京花の居る学園に向かう。
もしかしたら京花が戦う姿が見られるかもしれない。
強くなった京花がどういった立ち回りをするのか楽しみであった。
タクシーを捕まえて京花が通う帝国学園の門の前で降りると、私服を着た者や防具をつけた者がチラホラ見える。
門の近くまで行くと、警備員に呼び止められる。
「君ちょっといいか」
初老ぐらいの男性警備員に止められる。
「どうしました?」
「君はこの前信雄選手に勝った人だよね? 私はあれから君のファンになってしまってね。これからも応援しているよ! あと校内ランク戦を見に来たのだよね? パンフレットを渡しておくから楽しんできてね」
気さくに声を掛けてくれた警備員は堂真の試合を見たいらい堂真のファンになったようである。
ゲームをしていた時代の時もファンから色々とメッセージ等を貰っていた。素直に嬉しいを感じる。
「ありがとうございます。期待に沿えるよう頑張りますね」
堂真は警備員に軽く頭を下げて門を潜る。
パンフレットを見ながら堂真はランク戦が行われている場所に向かう。
「それにしても相変らず広い敷地だな……」
一人呟きながら目的地を目指す。
しばらく歩くとそれらしい建物が見える。
円形の茶色いレンガのようなもので建てられている。中世の闘技場みたいな所である。
なぜ? と堂真は首を傾げる。
周りは現代の建物が建ってあるのにここだけ中世になのかと思ったが、戦いをする場所としては相応しいかまえである。
誰かの試合が終わったのか、歓声の声が大気を震わす。
自然と足取りが軽くなる堂真は少し足早で中に入って行く。
建物の階段を上がり内部入ると、中央に正方形の大きな舞台があり、それをどの角度でも見られるように観客はどの位置でも見える様に円を描くように観客席があり、上空に大きなモニターも浮いている。
丁度試合が終わった選手が中央で礼をして待機所に戻る所であった。
モニターに映っていたのは、京花と学園の男子生徒であった。
勝ったのだろうかと思い堂真は一番前の席に移動して京花が見つけやすそうな位置に移動して覗き込むように下を見る。
退路の直線状にいる堂真の事に気がついた京花は、花が咲く様な笑顔で武器を持つ手で手を振って来る。
気がついてくれた事がわかった堂真は京花にクチパクで勝ったのかと聞くと、親指を立てて選手の待機所に戻って行く。
京花の行動に堂真はふと笑みをこぼす。
無自覚に微笑む堂真の姿は近くに居た女性を虜にしてしまう程に強烈なものであった。
当の本人は周囲のおかしい状況には気がつかず、次の試合が始まるまで後ろの空いている席に座って見る事にするが、それから何試合か見たけども試合の内容があまりにも薄く、堂真はすでに飽きていた。
戦士、魔法使い、狩人と色々な職業がいるが、戦士はスキルの威力が高い攻撃があるが、それはデメリットで隙が出来るのだが、それをカバーするのには他のスキルと繋げる事でモーションの隙を減らす技があるが、それを使う事は無く、脳筋の様な攻撃をしているだけであった。
時に酷いと思ったのが魔法使いであった。
棒立ちで魔法を唱え攻撃をすると言う暴挙である。
自分が的だと気がついていない様子であった。対戦相手の狩人の溜め技をくらって一撃で終わっていた。
ゲーム内でパーティーの中にあんなのが居れば即パーティーから切られる立ち回りである。
今後のパーティーメンバー探しに来ていたが、現状では京花以外はいらないと感じられる程であった。
ため息を漏らしながら競技場を背に戻ろうとすると、堂真の肩に手が置かれる。
「ん?」
堂真が振り向くと、そこに居たのは信雄であった。
久しぶりに見る姿は前回と違い、少し取物がとれたようにスッキリとしている。
「信雄か…… 久しぶりだな」
「あぁ久しぶりだな。今日のランク戦を見に来たのか?」
相変わらず身長が大きい信雄は堂真を見下げる様に話す。
「そうだな。あんな試合ならレベルが高いと有利だな」
「確かに」
信雄を何かを感じているのかクツクツと笑っている。
ゲームキャラで未来の日本に転生、過去の日本は滅んでいた!? 市民チコリ @hinari0303
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