まずは、全ての読者は、この短編の文面に度肝を抜かれることだろう。
さらにそこには、われわれが退行している、と示唆するような眼差しすら感じられる。
そう、われわれは現代という時代のなかで、全てを見えるようにし、そしてそれに線を引き始めたのだ。
ここで描かれているのは、現代を押し広げた未来図である。単に描写するのではなく、そのコンテクストにおいて相応しい表現手段を選びとったのだ。
この単語にはこの読みでないといけない、という規則は、読み方を与えることによって、いかようにも変えられる。
その仕掛けにこそ、作者の企みが織り込まれている。ただ圧倒される一編だった。
最初、読んだ時には、内容がよくわからなかった。何度か読み返して、なんとなくわかってきて、ようやくこれだろうという解釈に思い至った。
だが、正直、それが正しいのかどうかわからない。何か、作者の罠にはまっているような気がしてならない。実はねらいは別のところになって、こちらはとんでもない勘違いをさせられているのではないか。そんなふうに思えてくる。
非表示の先にあるのは何か。
正義の刃はどこに向くべきなのか。いや、そもそも、そんなものが存在しているのか。
ぜひ読んでいただき、自分なりの解釈を見出して欲しい。
つきつけるテーマは重く、それでいて興味深い。