私はこの作者のスタンスは好きです。

1.この作品に出てくる登場人物は、主人公を含めて悪人ばかりです。主人公サイドと敵サイドとの戦いが描かれるのですが、善人が出てこないので、まるでヤクザ映画のような面白さがあります。

2.主人公がいつまでも最強にならないので見ごたえがあります。主人公が根本的に一般キャラであるという制限を最後まで突破できないため、「負ける可能性が結構あるよな。」という思いを最後まで持たされます。

3.主人公とヒロインとのイチャラブがうざくない。通常のなろう系小説では、主人公とヒロインとのイチャラブが始まったり、ハーレム展開が始まったりすると読むのをやめます。気持ち悪くなるからです。しかしこの作品では違いました。この主人公にモテ要素が全くなく、主人公にとってはこのヒロインが唯一の相手なんだろうと思われるからだと思います。「多少イチャイチャしたっていいじゃないか。」そんな風に感じてしまいました。

4.特に後半になるにつれ、誤字が多くなっていきます。ただ「この小説って、ものすごいスピードで書き殴ったんだろうなあ。」「絶対に推敲してないよな、書いて書いて書きまくったんだろうなあ。」と思われるので、それはそれでありだと思います。何はともあれ、完結しているところが素晴らしいです。

全体的に細かい設定がザルで、何故そうなるのかを読者に理解させる描写も少ないまま物語はどんどんと進んでいきます。しかしながら、それでも最後まで読み切ってしまいました。読みながら「この作者の感性は他の作者たちとは違うな。」「この作者なら、今の常識にとらわれない作品を期待できるのではないか。」などと考えておりました。まあ、まともな作品ではないことは確かです。ただ、次の作品を読みたいと考えていることも、また確かです。