杞憂
かがち史
杞憂
私という人間は、昔から、とかく考え過ぎる
水辺を歩けばスマホを落とすのではないかと心配し、山際を歩けば土砂崩れが起こるのではないかと心配する。エレベーターに乗ればケーブルが切れるのではないかと心配し、高層ビルに上がれば足元から崩れるのではないかと心配する。人気のない場所では宇宙人に攫われないかと心配し、人混みの中では通り魔に遭わないかと心配する。
プレゼントやおみやげ選びでは、相手の好みや生活習慣、アレルギーの有無、ここ最近の買い物事情や他人との兼ね合いを考え尽くさないと決められない。誰かが怒れば、その原因は自分じゃないかと悩み、誰かが笑えば、それが心からかどうかを悩んでしまう。
天空が落ちることを心配した古代人を笑えない。
むしろ私はそちらの側だ。ずっとずっと、笑われる側だった。
「本当に、考え過ぎだって」
それが私への周囲の総評である。
だから私も、自分が考え過ぎなのだという自覚はある。
普通はそんなことまで考えないのだと、いらぬ心配で胸を痛める必要はないのだと、頭ではちゃんと理解しているのだ。
それでもやっぱり考えてしまう。
考えるのは頭の作業のはずで、その頭が理解して納得しているのに、どうしても考えるのを止められない。
あの車は曲がり切れずにこちらへ突っ込んでくるのではないか。あのヘリは突然故障して、頭上に落ちてくるのではないか。あの路地から自棄になった人が躍り出て、ナイフを私に突き立てるのではないか。
通学の電車が脱線するのでは。遠足のバスが横転するのでは。何気ない一挙手一投足が、相手を傷つけてしまうのでは――。
親兄弟も友達も、そんな私に呆れ果てていた。
「そんなことまで考えてたら、なんにもできないでしょう」
「もっと適当に生きなよ」
適当と言われてもわからない。
それでも、口にすればするだけ呆れられることはわかったから、口数はどんどんと減っていった。どんなに心配事があっても、どんなに悩むことがあっても、他人の前では洩らさないように気をつけた。それでも時々、どうしても堪えられずにぽろりと不安を零した時には、やっぱりこう言って笑われた。
「――考え過ぎだって」
ある時、そんな私を笑わない人が現れた。
より正確には、嗤わない人だ。優しく微笑むことはあっても、嘲笑することはない。楽しそうに声を立てることはあっても、鼻先で笑い飛ばしたりしない人。
大学の野鳥観察サークルで会った同回生の彼は、少し変わった人だった。
誰にでも平等に接する主義らしく、すでに私と他のサークル仲間との間に厳然と引かれていた線を気にも留めず、当たり前の顔をして話しかけてきた。気まずそうな周囲、身構えてしまう私にも気付かないふりで、グループ行動に誘ってくれたり、買い出し班に組み込んでくれたりした。
最初こそ意図がわからず、いろいろと考えてしまったけれど、三ヶ月続けばさすがに慣れる。
そうするうち、気付けば私とサークル仲間との間には、線なんてものはなくなっていた。
……いいや。正確には、私の中に引かれていた線がなくなったんだろう。落ち着いて話を聞いてみれば、サークル仲間たちは、無口な私を心配してくれていたようだった。野鳥の観察が好きな心やわらかな人たちは、巣から落ちた雛を見つけたように、ただ遠巻きに私を窺っていただけだったらしい。
ただ私が「考え過ぎだ」と言われることを考え過ぎて、身動き取れなくなっていただけだったのだ。
ある日の部室。彼と二人で買い出しの留守番をしていた時に、そんな話をぽつりとすると、彼はまた「そっか、よかったね」と笑ってくれた。
その嬉しそうな笑顔がとても不思議で、私は尋ねた。
「貴方は私のこと、変だと思わないの? 考え過ぎだって、みんな言うのに」
少し思考するそぶりを挟み、彼は穏やかに頷いた。
「きみは想像力が豊かなんだよ。ひとつの種から芽を出すくらいが他の人たちだとして、きみはその芽をすくすく育てて、花を咲かせて実までつけさせる。それ自体は別に、変なことでも悪いことでもない」
「でもやっぱり、みんなとは違うでしょ。……みんなはなんで、そこまで考えないでいられるんだろう」
みんなと違うのはつらい。私だって、こんなにも恐ろしいことばかり、考えたくて考えているわけじゃない。考えるにしても、せめて楽しいことならいいのに。
そう訴えた私に、「生存本能的なものかな」と彼は軽く呟いた。
「生存本能?」
「身を守る力が強いってこと。身の回りで起こりうる危険を察知して、そこから自分が助かるには、って無意識に考えてるんだと思う。野ウサギがピンと耳を立てて、どんな小さな音でも聞き逃すまいとしているように」
世界が怖いから考えるのか。
考えるから世界が怖いのか。
私の始まりはどちらだろう。物心ついた時にはもう今と同じように考えていたはずで、どこを起点としているのかわからない。どこで終わればいいのかわからない。
鶏か卵かみたいな思考に陥って、私は途方に暮れてしまう。
そこに風穴を開けたのは、彼の一言だった。
「せっかくの想像力なんだし、小説でも書いてみたら?」
「……小説?」
「きみの代わりに、キャラクターにその困難を乗り越えさせるんだよ。テロリストに遭っても、ビルが崩れても、ハリウッド映画なら平気だろ?」
「それは……そうだけど」
あまりに思いもしないことに、私は情けない気持ちになる。
「映画と現実は違うでしょ」
「想像と現実も違うはずだよ」
それを分けられるようになるのが肝心なんだよ、きっと。
憮然とする私を微笑ましげに見て、彼はそう私の片手を叩いた。
「ドキドキハラハラすることがあっても、それは怖いことじゃない。ウィル・スミスやジャッキーチェンならどうするかって考えて、それを文章にして吐き出してみたらいい」
「……うん」
そういうわけで、私は小説を書き始めた。
国語の成績は並の並。読書は嫌いではないけれど、すすんで余暇活動に選ぶほどでもなかった私は、当然ながら、まともな文章を書ける筆力を持っていなかった。
最初に書いたのは、箇条書きめいた素っ気ない短文。
多分、千字にも満たなかったと思う。思考を文章にするだけの作業に、こんなにも苦労するとは思わなかった。思ったままをただ綴るだけでは、支離滅裂になってしまうのだ。起承転結も何もない、ただの乱文。
自分のあまりのセンスのなさに絶望しそうになりながら、彼の励ましに乗せられて、とにかく続けることを目標に決めた。
手書きの日記を毎日つけることにして、漢字力と文脈構成の練習にした。時系列順に出来事を書き出すことで、因果関係を洗い出す癖をつけていった。年に一冊、読むか読まないかだった小説も、月に一冊は読むようにした。
それと平行して、その日に考えてしまったことをメモして、どうすればそれを回避できるかまで考えるようにした。私自身には到底できない行動でも、ハリウッドや香港の映画俳優なら、と想像を広げて、倒れるビルから隣のビルへ飛び移ったり、電車の窓を叩き割って脱出したりと考えていった。
そうして次第に、私の文章は小説の体を成していき、そうなると私もどんどん楽しくなっていった。
書くことが楽しい。
考えることも――楽しい。
ちょうどその頃、少しずつネットに公開していた日々の空想小説が、とある編集者さんの目に留まった。
その作品についてぜひ連絡を取りたい、という旨のメールを見て、真っ先に私の頭を過ぎったのは、もちろん疑念だった。
自分の文章がお粗末だという自覚はある。出版なんて夢のまた夢だ。それなのにそんなメールを送ってこられるなんて、私には、自分が詐欺のターゲットになったのだとしか思えなかった。
私は、自分が未熟である自覚を織り交ぜて、一晩かけて考えた当たり障りのないお断りを返信した。これで終わりだと安堵したのも束の間、その返答は五分もせずに送られてきた。
「確かに、あなたの小説はまだまだ粗削りです。すぐに出版とはならないだろうけれど、わたしと一緒に作品づくりをしていきませんか」
熱意があるように見えたけれど、それも演技かもしれなかった。私に突け入る隙を見つけたのかもしれず、迂闊に応えるとひどい目をみるかもしれなかった。ネットを開けば創作業界の闇はいくらでも目に入ってきて、たとえ相手が本物でも、私が傷付いて終わるだけかもしれないとまで考えた。
そこまで考えて、考えてなお――私は、その誘いかけに惹かれてしまった。
ずっとつらくて苦しいだけだった私の『考え』が、誰かに求められるものになっている。もっともっと、たくさんの人に求められる可能性がある――。
それは、これ以上なく甘美な囁きに違いなかったのだ。
「……でもやっぱり、怖い気持ちもあるの。もしもなにかあったらって……」
「きみがやりたいなら、やってみたらいいんだよ」
相談した彼は、なんともあっさりと答えをくれた。
就活前に声をかけてくれたのはラッキーだ。親の支えや時間的、金銭的余裕があるうちに、思い切ったチャレンジをするのは悪くない。そう言って彼は、私の頬を少し強くつねって笑った。
「もしなにか困ることになっても、大丈夫。必ず、おれが助けるから」
「……うん」
ぎゅ、っとした痛みに、目が覚めるようだった。
私はその場で、編集者さんへと了承の文面を作って送った。
編集者さんとのやり取りは、主にネットを介して行われた。今は学業を優先するべきだと双方の考えが合致したからでもあり、単純に、向こうには私のために割ける時間がそこまでなかったからでもあった。
業界のことや、売筋ジャンルのうち私に向いていそうなものを教えてもらったり、試しに書いてみたものにアドバイスをしてもらったり。
そうして私が三回生になった夏のこと。提出したプロットにGOサインが出て、私はついに、商業用作品の執筆に挑むことになった。
不安も疑念もやむことはないけれど、それでも喜びが勝った私は、真っ先に彼へと伝えようと思った。ファミレスに待ち合わせ、席に着くや息せき切って報告した私に、彼は「おめでとう!」と我が事のように喜んでくれた。
ありがとう、と照れ笑いする私を、彼はしばらく見つめていた。
そしておもむろに、思いもしない言葉を付け足した。
「これをきっかけとは言わないけど――結婚を前提に、おれと付き合ってくれないか?」
「……えっ?」
あまりに突然の告白とプロポーズに、私はぽかんと彼を見返した。
そんな私の目を覚まさせるように、彼は、伸ばした片手で私の頬を、いつものようにぎゅっとつねった。思わず「痛っ!」と我に返ると、楽しそうに少し笑った。
「本当は、もっと前から思ってたんだけど。頑張ってるきみの邪魔になりたくなくて、ずっと黙ってたんだ。でも……これから先、きみはきっと、いろんな人と出会っていくだろう。きみの魅力に、他の男が気付くかもしれない。そうなった時、おれはきっと平静ではいられない。――だから、おれのものになってほしい」
「え……ええと……」
つねった痕を労わるように、優しく頬を撫でる大きな手。それよりはるかに強い熱を孕んだ彼の目に、私は途端に恥ずかしくなって、俯いた。
――彼といることは楽しかった。気楽にいられるほぼ唯一の異性だったし、どん底にいた私をすくい上げてくれた恩人でもある。そんな彼からの告白が、嬉しくないはずがない。総身が奮い立つほどに嬉しかった。
それでも私には、即答できなかった。
「ちょっと……考えさせて、ください」
私は昔から、とかく考え過ぎる性質である。
自他共に認めるその評価を裏切ることなく、私はとにかく考えた。ありとあらゆる可能性を。ありとあらゆる不安と希望を。
現実というのは、転がり落ちる石のようなものだと思う。人生という長い坂を、転がり始めたらもう止まれない。坂の途中でなにかにぶつかれば、それも巻き添えにして転がり続ける。巻き添えが巻き添えを生み、気付いた時には、抜き差しならない状況になっているような――。
彼との『恋愛』は、まさに私の
ただの淡い付き合いなら、茫洋とした未来だけを描いた関係なら、さほど考えることもなかったのかもしれない。けれど、彼が求めたのは結婚を前提にしたお付き合いだった。生涯の伴侶を選ぶということは、すなわちこの先の人生を選ぶということだ。簡単に決められるようなことではなかった。
なぜならこの選択は、私だけでなく、彼の人生をも決めるものなのだから。
――そうして一ヶ月の時間をかけて、私は彼への返答を決めた。
「ごめんなさい」
カフェの片隅で向き合って、私は彼へと頭を下げた。
「いろいろたくさん考えたんだけど……私じゃ、あなたのことを幸せにはできないと思う。私よりもっと素敵な人が、あなたにはいると思うの」
理由が知りたいと言った彼に、私は一ヶ月の思考をぽつりぽつりと口にした。
――私は彼が好きだった。だから気持ちは嬉しかった。それは本当だったけれど、私には、彼を幸せにする自信がなかった。一緒にいる時間は多かったけど、それでもまだ、私には彼の幸せがわからなかったのだ。
幸せとはなんだろう。
辞書には『心が満ち足りていること』とあった。私にとってのそれは、自分の考えが上手に繋がって、浮き立つような文章を書けた時だ。あるいは静かに思考に浸っていられる時でもあり、穏やかで温かな空間にいられる時でもある。
けれど、彼にとってのそれが何か、私にはまだわからなかった。
わからないものに手を出して、いつか「こんなはずじゃなかった」と思われるのが怖かった。わかるだけの時間をくれるなら――とも思ったけれど、無責任な言葉は返せなかった。だから。
私は最後にもう一度、彼へと深く頭を下げた。
「本当に、ごめんなさい」
「……そうか」
わかった、と答えた彼の顔を、私は今も知らずにいる。
男女の間に友情なんてない、という言葉はよく聞くけれど、実際に自分でそう思う日がくるとは考えていなかった。
拒絶を返したその日から、彼と私の距離は急速に開いていった。サークル活動では普通に接するけれど、ただそれだけ。友達関係に戻ることもできず、当たり障りのない同回生にまで存在が希薄になった頃、彼が同じゼミの女の子と付き合い始めたのを知った。
可愛い子だった。明るくてよく笑う子で、陽だまりが似合う女の子だった。
彼女と笑い合う彼は、とても幸せそうで――だからこれでよかったのだと、私は深く納得した。
私では、彼を幸せにはできなかった。
大学を卒業し、私はウェブライターの傍らで、小説家として生計を立てるようになった。在学中に書いたあの長編小説がかろうじて売れ、シリーズ化が許可されて、続編の執筆に忙殺される日々の中。風の噂で、彼が結婚したことを知った。
相手はもちろん、あの女の子。
式はハワイで挙げられて、サークル仲間も何人か招待されていたらしい。瘡蓋を剥ぐような胸の痛みが微かにあったけれど、私にはもう、関係のないことだ。
人生という坂の中で、少しだけ一緒に転がった小石。私に小説家という生き方を教えてくれた、それは大切な小石だけど、もう並んで転がることはない。私には私の幸せがあるし、彼には彼の幸せがある。
それを分かち合える人と一緒に、人生を歩んでいってほしい。
そう願って、私は彼との日々を心に仕舞った――。
そして彼は、殺人犯となった。
それを知ったのは半年後。夕方のワイドショーだった。
ライターの方の原稿を無事に提出し、紅茶を片手に久々につけたテレビの中で、見知った男が殺人犯として顔と名前を晒されていた。
画面のテロップと番組アナウンサーは、その男を「家庭内暴力の末に妻を殺した容疑者」として扱っていた。事件の発覚はその日の朝だったらしく、仕事のために放置していたスマホを見ると、かつてのサークル仲間たちからいくつものメッセージが入っていた。同回生女子だけのグループだ。
驚愕の共有から始まったメッセージは、やがてそれぞれの伝手から集めた情報の羅列になり、そこから炙り出された『彼』の本性への戦慄になっていた。
――『彼』は、重度の嗜虐趣味を有していたらしい。
始めにその片鱗に触れたのは、サークルの先輩だったという。
野鳥観察に訪れた県内のハイキングコースで、先輩はふと、コースから外れた場所にいる彼を見つけた。しゃがみ込んで動かない後ろ姿に怪我でもしたのかと声をかけると、振り向いた彼の手の中に、小さな何かが乗っていた。
それは、ボロボロに傷付いたオスのモズだった。黒褐色の翼は根元から折られ、乱れた羽毛の間から細い骨が突き出していた。足は粘着質な何かに絡めとられ、それでもなお、そのモズはまだ生きていた。残酷なことに。
「キツネか猛禽にやられたんですかね、おれが見つけた時にはもうこうなってて。可哀想ですけど、これじゃあ助からないですよね」
そう言った彼の顔は、薄く笑って見えたという――先輩の主観を鵜呑みにするかはともかく、その場で彼が嘘をついたことは明白だった。なぜならそのモズを捕らえていたのは、自然界には存在しない、トリモチだったのだから。
トリモチでの鳥類捕獲は、鳥獣保護法に違反する。サークルでも話題に上がったことがあったのに、それと気付かないのは不自然なことだ。ましてや、襤褸切れのようになったそれを手に乗せて、じっくり観察するなんて。
それが人間にも向かった話は、同回生の女子から出た。
それは、彼の元カノの話だった。私が彼と出会う前、入学直後に付き合っていたというその人は、彼と初めて肌を重ねた時、血が滲むほどに噛みつかれたのだという。その他にも、身体に痕が残るような行為を何度も求められ、怖くなってすぐに別れたらしい。
内容が内容だし、表向きそんな人には見えないから、誰に話しても信じてもらえなかったけど――と。
それを聞いた同回生も「まさか」と思っていたそうだ。しかしそれも、男子の間では有名な話だったと今回の件で判明した。当時の彼はそういう店に通い詰めていたこともあったらしく、そんな彼と親密に見えた私のことも、陰で心配してくれていたらしい。
そしてその一部からは、嘘か誠か、その頃の彼の発言もリークされていた。
「――あいつはさ、警戒心が強いくせに簡単なんだよ」
「世界の何もかもを疑って、怖がってる。だけどそれを隣で聞いて、共有して、一緒に考えてやってたら、すぐに同じ側の人間だって思い込むんだ」
「あいつならきっと、おれの言うこと、なんでも聞くようになるだろうな――」
その「あいつ」が誰かなんて、目を逸らすだけ無駄な図星だった。
本当に、簡単な話だった。
――私という人間は、昔から、とかく考え過ぎる性質だった。
そんな私を表す言葉として、『考え過ぎ』の次に『杞憂』があった。『杞憂』とは『杞の国の人の憂い』――古代中国にあった杞という国の人が、天空が落ちるのを憂いていたこと。そんなあり得ないことで心を痛めるなんて、という揶揄を含めたその言葉が、私の前半生にはつきまとっていた。
あの時の私の考えは、果たして『杞憂』だったのだろうか。
それが本当にあり得ないことかどうかなんて、きっと、誰にもわからない。
人類は月にも足跡を刻んだし、ナスカの地上絵には作者がいる。ピラミッドの中にはガレキが詰まっていて、エベレスト山頂では海洋古生物の化石が出る。両親がいなくても子どもは生まれるし、発掘した頭蓋骨から元の顔を知ることもできる。
あの青い半球も、いつか、大地へと落ちてくるのかもしれない。
杞憂 かがち史 @kkym-3373
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