Chapter Two: The Human Nagoyanization Project(人類名古屋人化計画)

 ゲテモノ料理で有名な喫茶マウンテンで小倉トーストを食べながら話す二人


K「名古屋人は頭がおかしいんだ」


K「①車の運転が荒すぎる、②結婚式にお金をかけすぎる、そして③何にでも赤味噌を入れるような料理センス。

 そもそも俺の親父の頭がおかしいという時点で、すべての名古屋人の頭がおかしいことは言うまでもない」


F「いやその理屈はおかしい」


F「ところで、ミスドで昼食をとった後にさらにこんな甘ったるい料理をおごるっていうのはどういう魂胆だ? 『頼み』っていうのは、僕をデブらせて糖尿病にすることか?」


 K氏、フッ、と声を漏らし、不敵な笑みを浮かべる。


K「いいニュースと悪いニュースがある。どちらから先に聞きたい?」


F「悪いニュースから」


K「先日、朝食にPB&J(ピーナッツバターアンドジェリーサンドイッチ)をつくろうとしたんだが、ピーナッツバターを切らしていることをすっかり忘れててね。冷蔵庫を開けたらめぼしいものは納豆しかなかった」


F「……それで?」


K「ものは試しだと思って、納豆をすりつぶしてペースト状になるまでかき混ぜてみた。オリーブオイルを少々入れてね」


F「Blend N(atto)というわけか」


K「俺はメイド喫茶の店主でも何でもないけどね。そしてそれを半分に切ったトーストの片側に塗りつけ、もう片方にイチゴジャムを塗って挟んで食ってみたのさ。ここまでが悪いニュース」


F「Ew. So you made a "natto" and jelly sandwich, huh?(オェーッ。つまり、君は『納豆』ジャムサンドイッチを作った、ってか)」


K「Exactly. But it turns out...(その通り。しかし意外なことに)」


K「うまい」


K「いいニュースっていうのは、一攫千金のビジネス・チャンスを思いついたってことなんだ」


 K氏は目を爛々と輝かせ、ここぞとばかりに声を張り上げた。


F「はぁ?」


K「俺たち二人で喫茶店を開業してボロ儲けしよう! 『N&J』こと納豆ジャムサンドイッチを看板商品にして大々的に売り出して!」


 フレドリクは呆れ顔でK氏を見つめた。


F「……そんなゲテモノ、本当に売れるのか?」


K「まずだな、最近は世界的に健康ブームだろ。PB&Jなんか特には健康に悪いって槍玉に挙げられてる」


F「確かにピーナッツバターは脂肪分と塩分が多すぎるかもしれない」


K「でも納豆ならただの大豆だし発酵食品で健康的だ」


F「ま、まあな。でもオリーブオイルが入ってるんじゃ……」


K「使う食パンもライ麦パンとかにすればロカボブームにも乗れる」


F「いや、でもイチゴジャムは糖質が多すg」


K「次に、日本じゃ納豆は安い。一パック25円とかだ。でもヨーロッパじゃ納豆は珍しいから10倍ぐらいの値段をふっかけても売れる」


K「いけるよ。これで二人で大金持ちだ! Now, who's ready to make a shit ton of money?」


F「そもそもの問題として、納豆にイチゴジャムなんてまずいだろ」


K「フレドリク君、君は今自分が食べているものが何か知っているか?」


F「ペロ、これは小倉トースト。……ハッ!」


K「そうだ。小倉餡の乗ったトーストが美味いんだ。甘い大豆が入ったサンドイッチがまずいわけないだろ!」





F「いや、大豆と小豆は違うd」


K「ゲテモノ好きの名古屋人が作った唯一美味しいものがこの小倉トーストなんだ。N&Jもきっとウケる。もしダメなら、いっそこの地球上にいるすべての人間を名古屋人にしてしまえばいい」


F「『人類名古屋人化計画』、と」





K「どっちかっていうと、納豆に砂糖を入れるのは新潟県民だから新潟人化計画かもしれない」

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Smørrebrød med Natto 中原恵一 @nakaharakch2

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