Smørrebrød med Natto

中原恵一

Chapter One: En Otaku Som Heter Fredrik(フレドリクという名のオタク)

K「さて、俺たちがこうして当たり前のようにミスタードーナツにやってきたのも予定調和といったところか」


フレドリク「戯言なんだよな……。ただゴールデンチョコレートが食べたかっただけじゃないか」


K「俺はココナツチョコレートの方が好きなんだ。色が似てるからたまに間違えて買ってしまう」


フレドリク「いや、似てはないだろ。それよりそれ、僕にも半分くれよ」


K「残念ながら今日は全品100円セールじゃないし、吸血鬼でもない君にドーナツをおごる気はない」


フレドリク「何を言い出すかと思ったら。割り勘で互いのドーナツを半分ずつシェアするという話だったじゃないか」


K「君もヴァイキングの子孫なら略奪してみせたまえ。やっぱココナッツうめえな!」


フレドリク「お前の首をオーディンに捧げてやろうか?」


K「やめろ、俺は役に立つ奴隷だから! ところで……」


フレドリク「うに?」




K「俺は西尾維新が大嫌いなんだ」




フレドリク「待て待て(苦笑)。それについては僕たちも以前話したとおりだが、もしそれについてこれ以上掘り下げようというなら、僕たちの友情は終わりだ」


K「ほう。仮に俺が『西尾維新が嫌いだ』と君に伝えたことで本当に俺たちの友情が崩壊したとしたら、そいつは西尾氏の言うところのPost hoc fallacyというものだ 」


フレドリク「つまり、西尾維新が嫌いだと君に伝えたから友情が壊れたのではなく、ほかに原因があると?」


K「その通り。俺たちの友情は銀河よりも不滅だ。そんなことで壊れたりしないさ」


フレドリク「だから、君が西尾維新が嫌いであることを受け入れろ、と」


K「うん」


フレドリク「君はいつも迂遠なやり方で、自分の要求を通そうとするね」


K「それじゃ、もっとダイレクトなやり方で君を説得しよう」


 そう言ってK氏は、背中に背負っていたリュックサックから化物語全巻を取り出した。その数、25冊。まるでドラえもんの四次元ポケットのように物理法則を無視して入っていたそれらは、K氏の手によって瞬く間のうちにミスドのイートインコーナーの小さなテーブルの上に所狭しと並べられた。その壮観な光景はまさにフレドリク氏にとって垂涎の的だった。


フレドリク「これは……!?」


K「まあ、こんなもの俺にとっては必要ないものだからこの場で全部燃やしてしまってもいいんだけど。どうだかなー。ノルウェーだとライトノベルなんてそもそも売ってないし、あってもすごく高いだろう」


フレドリク「……何が望みだ?」


K「取引をしよう」


K「まあ、俺たちも3年間友達だったし、ここにある化物語全25巻セットはこの場で快く君にプレゼントしてあげよう。その代わり一つ、俺の頼みを聞いてくれないか?」

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