エピローグ それから、それから……
アレから、一体どれだけの月日が経ってしまったことだろうか?
俺達は身近に迫った危機的状況を向かえ、そして奇跡的にも回避することができた。
けれども『日常』というものはいつの世でも、決して不変的なものではない。
それと言うのも……。
「シズネさん、エアコンの温度下げすぎっ! なんだよ、設定温度15度って! アンタも少しは電気代考えろよなっ!! 先月の電気代だけで3万越えてやがったぞ」
「う~~い。ユウキさぁ~ん、アイスまだですか~。安物ではダメですよ~、私はダッーーツ、しか受け付けませんからねぇ~。もし在庫が無ければ~、ダーーーーッシュッで買ってきてくださいよぉ~」
俺は家で寝転び寛いでいるシズネさんにエアコンの使いすぎを指摘した。
「あ~もうっ、姉さんまで! って、何でこんなに薄い本ばっか買い込んできやがったんだ!? しかも全部腐女子御用達のBL本ばっかじゃねぇかよっ!!」
「だってぇ~、毎月のようにサークルから新刊出ているんですもの♪」
そしてテーブル上どころか床にまで、なんだか分からない美少年達が侍っている表紙の薄い本を広げている姉さんに苦言を呈す。
「あとジズさんっ!! ご、ごめん。俺の技術が足りないばっかりに不自由をかけちまって……」
「いや、ええんですわ。ワテの体が大きゅうのが問題なんやし。それに兄さんもドンドン技術身に付いてますやないか」
外から顔を覗かせているジズさんの頭の上には木で作られたコンパネを繋げた四角い箱とともに、その周りを囲っているビニールやらなんやらがぶら下がっている。
「それともきゅ子っ! お前はいつも可愛いなぁ~♪」
「もきゅ? もきゅ~♪」
もきゅ子は相変わらず俺に懐き、そして癒しを与え続けていた。
そう……俺達はあれから普通の日常生活を過ごしていたのだ。
初めこそお隣の家の壁をぶっ壊してしまい怒られてしまったのだが、何故かジズさんについて言及はされなかった。
それと言うのもちょっと体の大きなヒトであると認識され、誰もジズさんのことをドラゴンだとは思っていないらしい。
それをシズネさん及び姉さんこと女神様に問いただしたところ……。
「ああ、それですか。たぶんアチラの世界がコチラへと干渉してしまったことにより、引き起こされた認識の齟齬でしょう」
「そーそーっ。本来ならif……つまりもしもの世界によって助けられたんだから、ちっとくらい融通利かせてもいいんじゃねぇのか? ああん! ……ってことでしょうね」
「…………」
どうやら二人して俺が理解できないと思って適当な言葉の羅列を並べ立て、煙に巻こうとしているみたいだ。
だが確かにこんなに大きな体のジズさんが外に居るにも関わらず、誰も騒ぎ立てるどころか、無関心であった以上その話をどこか不信に思いつつも、鵜呑みにするほかなかった。
けれども問題はそれだけじゃなかった。
アチラ側の世界の登場人物で周りから認められているとはいえ、戸籍などの問題がある。
「ああ、そんなものですか? そんなものは現代における錬金術であるプリンターの力を得れば造作もない……」
……っと、俺はそれ以上聞いてはいけないと、自らお耳に両手を当て右から左へと受け流した。
当然他にも食料の問題(主にジズさんの分)や住人が増えたことによる支出の増加(主にシズネさんと姉さんの浪費)などなど、挙げたらキリがない。
「これで本当におしまい、おしまい……って、ハッピーエンドで終わるヤツなのかよ?」
世界は救われた。だが代わりとして俺のお財布事情はもはや世紀末を通り越して、ディストピアへと突入するのは時間の問題だった。
「ああ、ユウキさんユウキさん。最後にこれだけは私に言わせてくださいね♪ こほんっ……この物語は悪魔
「……いや、シズネさん。それだとノンフィクションの物語になっちまうだろうが……アンタ最後まで何がしたかったんだよ」
俺はドヤ顔を決め込むシズネさんのボケに対して最後までツッコミ役を強要されるのだった。
「コラーッ! 最後の最後で私の出番が出ていないじゃないかっ! もしかして勇者であるこの私を忘れていたのかーっ!!」
「「あっ……す、すっかり忘れてた(忘れてましたね)」」
まぁまぁ多少おざなりのご都合主義の極みではあったが、こうして最後に勇者であるアマネが出てきたことにより、物語の幕は閉じようとしている。
俺達の物語はあくまでもファンタジーとして、これから先も続いていくことになるのかもしれない。
ただ勇者が魔王を倒して、おしまい、おしまい……っと、締めの言葉を口にして幕を閉じるただの物語が……いつまでも永遠の刻を越えて……。
悪魔demoファンタジー fin
悪魔demoファンタジー 月乃兎姫 @scarlet2200
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