暗い檻でうずくまって

 その日の夜、暗い檻の隅っこで、私は本もののうさぎみたいにうずくまってルズランのことを考えていた。



 ルズラン。貴族の息子で、優しくて、格好よくて、お菓子をくれて、笑顔が素敵。私が知っているのは、それでぜんぶ。

 でも、それでじゅうぶんだとも思う。



 耳が、ぴこぴこ動く。胸が、とくとく鳴っている。私は、顔を両腕にうずめる。



「ルズラン……」


 この気持ちが、かなうはず、ない。私は、あくまでうさぎなんだから。


 でも――。

 ルズランは、もうじき結婚してしまう。

 そうしたら、二度とこの気持ちを伝えることはできなくなってしまう。

 それどころか、会うこともできなくなってしまうかもしれない。



 それくらいなら……。



 私は顔を上げ暗闇を見つめて、きゅっと唇を噛んだ。

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