第2話 祝福があるように いと高きところに
前に引っ張られていった体は突然壁にぶつっかたかのように押し返された。その瞬間に周りの景色が物凄い勢いで目に入ってきた。長方形の石の敷き詰められた石畳。そして一段上がった所に芝生の庭。
そして私は芝生に向かって顔を突っ込んで地面と強く衝突した。周りからはアッと叫ぶ声やざわざわと話し合う声が聞こえる。独特な土のにおいがする。そのうちだんだん目の前が真っ暗になっていて気を失ってしまった。空から永遠に落ち続けていたような感覚から解放されてすごく気持ちが落ち着いた。
目が覚めるとベッドの
「やっと目が覚めましたか」
声をする方を見ると黒い修道服のようなものを着た中年の男性が立っていた。
「私はハルトビフィ。ここの修道院の院長です」
私も自己紹介をしようとしたが、体がずきッと痛んで声が出なかった。
「まあ無理をなさらず。痛みが治まるまでゆっくりなさってください」
そういうと彼は部屋から出て行ってしまった。
何が何だか分からないが私は異世界転生ができたのかもしれない。皆、服装が中世だし、建物も中世な感じなのである。周りには自分が今横になっているベッドと同じようなベッドが7床あって格子窓が一つだけありそこから日光が差し込んでいた。白いごつごつとした壁には七人の聖人のような人物の描かれた宗教画の様な絵画がかかっていた。
しばらく横になってくつろいでいると、金属のこすれあう音と短いリズムの足音が聞こえてきた。誰だろうと思っていると、比較的軽装の鎧を着て腰に剣を吊るした金髪の女性が入ってきた。
「ほら。あなた私のこと分かる?」
少し強めの口調でこちらを凝視して話しかけてきた。とはいえ誰か分からないので言葉に詰待っていると、
「まあ覚えてるわけないか。あんた気絶してたし」
「本当だよ。分かるわけないだろ」
声をだすと体が痛んだ。すると彼女は横になってる私の隣に置いてあった棚に腰かけた。体が痛むが私は関係なく話続けた。
「で、君は一体誰なんだ」
「私はあんたのけがの手当てをしたの」
この女性は私の手当てをしてくれたらしい。じゃああの修道院の人は何なんだ。
「修道院の人じゃなくてか」
「だってあんた治癒魔法が効果なかったんだから。修道院の診療所では全部、治癒魔法で済ませるから包帯を巻ける人はいないんだよ」
「なんで効果なかったの」
俺は驚きと疑問の意味を込めて聞き返してみた。しかし、この世界には魔法が存在しているみたいだ。やはり異世界なんだう。
「知らないわよ。第一突然何もない所から吹っ飛んできたらしいじゃないの。あんたは一体何なの?」
さて一体どう自己紹介していいのか。自分はこの世界の住民でもないし。ここは正直にすべて話せばいいのだろうか。
「私は文月 隆敏。車、というより馬車に轢かれて気づいたらここにいた。多分、異世界から来たって事になる」
「ふーん、そうなんだ」
「疑わないのかい?」
「治癒魔法が効果ない時点で普通の人間では無いことは何となく想像ついたからね。でも異世界人ね。で異世界はどんなところなの」
理解がとてもいい人だ。そして切り替えが早い。疑われることを覚悟して言い訳を考えていたのだが、それはもう必要なくなった。
「異世界はここより文明が発達していて、ものすごく高い建物がある。そして魔法が無いんだ」
物凄く簡単な説明だが大丈夫だろうか。
「なるほど。それがあんたに治癒魔法が効かなかった理由か。俄然あんたに興味が湧いてきた。怪我が治ったら私に伝えるように言ってくれ。」
そういうと彼女は立ち上がって部屋から出ていこうとした。
「待った。君の名前を聞いていない」私が呼び止めると彼女は
「あたしはシュヴァリエル。この都市では一番腕の立つ冒険者だよ。覚えとくんだね」
そういうと彼女は部屋からそそくさと出て行ってしまった。
魔法、冒険者。ファンタジーな異世界に転生したんだなーとつくづく思う。しかしステータスってどうやって開くんだろう。心の中で唱えても出てこないし……
新訳・異世界転生 若宮 夢路 @wakamiya_yumezi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。新訳・異世界転生の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます