新訳・異世界転生

若宮 夢路

第1話 転生 神の国は近づいた

ピヨォ――ピヨピヨ…… ピヨォ――ピヨピヨ……

 信号の音にはっと気づくとスマートフォンから顔を上げ長い横断歩道の向こう側を見つめる。信号機は太陽の光に照らされていつもより少しばかりか暗く見えた。周りの人が歩きだすのに合わせて自分も歩き出す。そしてまた頭を下げてスマートフォンを見つめる。いつもと同じ朝にいつもと同じ格好。

ちょうど中央帯の横を過ぎるあたりで後ろの方から甲高いキャッという女性の叫び声が聞こえたような気がした。後ろを振り返ろうと、首を右上に上げたら自分に向かって真っすぐ突っ込んでくるトラックが見えた。

私は左足にもたれかかるように崩れそうになった。トラックが進んでくるのがゆっくりと、じっくりと伝わってくる。死を実感した瞬間だった。そういえばアニメではこんな調子で異世界転生をしていた。どうせ死ぬなら異世界転生したいものだ。いや異世界転生できるなら死にたいくらいだ。そんなことを考える内にトラックは鼻先20センチメートルという所まで来ていた。右足にトラックのフロントスポイラーがぶつかる。

異世界転生がしたい。異世界転生がしたい。

体にフロントバンパーがぶつかって体が宙に浮いて吹き飛ばされる。

異世界転生がしたい。異世界転生がしたい。異世界転生がしたい。

だんだんと目の前からトラックが遠ざかっていき体の力が抜けてくる。

異世界転生がしたい。異世界転生がしたい。異世界転生がしたい。異世界転生がしたい。

目の前からトラックがどんどん遠ざかっていく、背中を引っ張られるような気分になってきた。

異世界転生。異世界転生。異世界転生。異世界転生。異世界転生。異世界転生。異世界転生。異世界転生。

トラックが小さくなっていく。景色が引き延ばされていく。

もう針の先の様にトラックが小さくなった。永遠に後ろに吹き飛ばされていくような気分だ。

頭が痛い。胸が痛い。頭の中を今までに聞いたことのないような大きな音が通り過ぎていく。頭が縮むようだ。縮んで縮んで縮こまっていく――――


カャラコン―――― 頭がぱっとはじけた。


体は真っすぐ前に引っ張られていった。ジェットコースターのような速さだ。音速の様に光速のようにどんどん引っ張られてく。トラックが今度は近づいてくる。そしてトラックを突き抜けどんどん引き込まれていった。

――――――異世界転生がしたい。

――――ぃ転生がしたい。

――ぁしたい。

―。


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