第2話 勇者、魔王を勧誘します。

ぱかり、と擬音が入りそうな感じで眼を開けた。いや、そもそも開けていたのか閉じていたのかも解らないが、とにかく黒から一転、視界は白で埋め尽くされていた。


360度真っ白である。


僅かな懐かしさを感じるそこは、勇者召喚された折りに神様と会い、祝福と言う名のチート能力をいただいた所だった。


「あー…」


ここにいるということは、少なくとも私が死んだのは事実だろう。座り込んでいた私は、パタリと後ろに倒れ込んだ。


と、視界に黒い塊が映った。


寝転んだまま視線を向ければ、そこに居たのはとっても意外な人物だった。


「……魔王?」


私の声に反応して塊が動く。


「……勇者、か?」


夜の闇のような艶やかな長い髪、おおよそ陽の光とは無縁そうな白い肌、頭には螺旋模様の入った真珠色の角が額に向かって突き出ている。細面に完璧に配置された金の相貌が少し驚いたように私を見下ろしていた。


……うん、超絶イケメンだ。


乙女ゲーで、敵対関係なのに恋に落ちちゃうようなイケメンだ。……もっとも私達にはそんな暇は無かったが。


「何故この様な所に居る?」


人気声優も真っ青のイケボだ。ただ、今は残念なことにテンションは上がらないけど。


「あー…ぅん、仲間に殺されちゃったみたい…」


情けなく語尾が小さくなる自分の声に苦笑した。思った以上に精神的ダメージが大きいみたいだ。


「…そうか。」


眼を細めて魔王はそっと私の頭を撫でた。私と魔王の距離は40㎝位…思ったよりも近かった。そんなことを思いながらも大人しくされるままになった。数十分前に死闘を繰り広げたというのに…ひんやりとした大きな手が気持ち良くて眼を閉じた。


ティンッ♪


ん?何の音?


眼を開けると目の前にゲームで良く見るメッセージ画面があった。


『復活のスキルの発動条件を確認、ギフトとして種族を選択できます。

※なお、このスキルは1度しか発動できないョ。スキルを発動しちゃいます?』


「………、神様?」


ピロンッ♪


『呼んだー?(* ̄▽ ̄)ノ』

「何このスキル?」

『最初に来たときにあげたでしょー?(#`皿´)ノ』


私の声に答えて会話ウィンドウに文字が綴られる。ちなみに相手はこの世界の神様で、2年前もこんな感じだった。姿は見たことない、引きこもりらしい。


「2年前の事なんて忘れたよー、一覧表で出されたしさ。」

『もう一度見るがよい(*`Д´)ノ!!!』


よいっしょ、と声を掛けて起き上がり、出て来たスキル一覧表のウィンドウを眺める。あ、確かにあるや。『復活』のスキル。

視線を感じて魔王を振り返ると、魔王は何だか変な顔をしていた。


「……ね、神様。」

『なんだね( ・◇・)?』

「このスキルって、有効範囲は私だけ?」

『……あー…1人位ならオマケしてあげなくもないョ(b ̄∀ ̄)』


私の意図に気づいたらしい神様は、直ぐに私の欲しい返事をくれた。にやりと笑って魔王に身体ごと向き直る。


「魔王、私と一緒に復讐しませんか?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る