〈Epilogue〉


 ゲーム機の画面が暗転し、タイトル画面に戻る。

 そして、あなたは大きく息をはいた。

 それから電源を切ってゲームを頭の横に置く。

 高い天井部分に取り付けられた窓から見える空は綺麗な夕焼けに染まっている。

 ゲームを始めたのは朝方だと記憶しているから、クリアに丸一日使ってしまったということだが、あなたの胸中は暖かい感情で満たされている。

 しばらく余韻に浸っていたかったが、食事当番だったことを思い出したあなたはゲーム機をソファに置いて立ち上がると、キッチンまで歩いていく。

 壁にかけられていたエプロンを手に取り、着用する。

 食材を冷蔵庫から取り出し、着々と準備を進めていく。

 そうして黙々と夜ご飯の調理をするうち、あなたは噂には続きがあったことを思い出す。

 そのゲームは決して結末を見ることができない。

 けれど、結末を見届けた者には

 その噂が本当かどうか、あなたは確かめる必要がない。

 だって、なぜなら――――


 ふいに玄関のチャイムが鳴る。

 何度も連続で鳴らされる。

 あまりのうるささにたまらずドアまで駆けていき、勢いのまま開けた。

 すると、胸の内に黒髪が飛びこんできて、あなたはとっさに抱きとめる。

 抱きとめられたその人はパッと顔をあげ、


「ただいま! ちょっと遅くなっちゃった。もうご飯食べちゃった?」


「おかえり。ううん、たったいまできたとこ。一緒に食べよ?」


「やったあ。ところで晩ご飯はなあに?」


「先週中辛食べられるようになった記念でまたカレー。あ、でも安心してな。すりおろしりんごとハチミツ入りやから」


「わあい! あっ、そういえば聞いた!? アレ百万本突破したって!」


「えうっそ!?」


「嘘じゃないよ! ほらほらこれ見て?」


 笑い合いながら食卓に向かう、いまのはとても幸せだ。




 fin.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『拝啓、百合作品を好む皆さまへ。大好きな友だちが神になりました。』 にのまえ あきら @allforone012

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ