84話 千恵のお友達
朝起きると、俺はなぜかリビングのソファーに寝そべっていた。
「‥‥‥あぁ、昨日はここで寝たのか」
昨日の深夜、まさかのまさかであったが妹ちゃんが俺のベッドに入り込んでいた事件。
千恵の誤解は何とか解けたが、その後の妹ちゃんの話の内容が余りに突飛し過ぎていた。
俺は勿論あんな大層なお願いを聞き入れる事は出来ないし、そもそも成し遂げる事など不可能に近い。古瀬さんの壁の厚さを舐めるんじゃない。あの人を殻から破るには相当の労力と手段が必要になってくる。しかし何故俺にはそんな能力ないのに妹ちゃんはあんな期待した目で俺を見てきたのか。
彼女の言い分も勿論分かる。
それ程姉である古瀬さんを慕っているのだろう。
しかしだったら尚更、その課題に挑むべきは家族である妹ちゃんの役目なはず。そこに血の繋がりが無いにしても、彼女達には長年培ってきた深い絆があるはずだ。
そう信じる事しか、俺には出来ないんだ。
俺にはちょっとばかし荷が重すぎる。
‥‥いいや、ちょっとなんてものじゃないか。
「はぁ、飯作るか」
ソファーから立ち上がり、伸びをしながら一人呟く。
ちなみに両親は今家にいない。
結婚記念日だとかで、あの二人はどっかに行ってる。
だから必然的に飯を作る人が俺しかいない。千恵に任せると悲惨な事になりそうだからね。
「おはよう兄ちゃん」
「おはよう」
適当に味噌汁や目玉焼きを作っていると、寝ぼけまなこな目で千恵がリビングに降りてきた。
「妹ちゃんは?」
「まだ寝てるよ。一応起こしたけど、昨日寝るのが遅かったしね」
「そうか」
まぁ確かに、昨日の深夜は話し合いもあったりして就寝につくのが3時くらいだった。恐らく妹ちゃんは夜更かしに慣れていないのだろう。
「ふわぁ・・・眠い」
「まだ寝ててもいいぞ。日曜だし」
「ううん、今日はもう一人家に来るから起きとかないと」
「まだ来るのか・・・?」
てっきり妹ちゃんだけだと思っていたのだが。
「うん。もうすぐ友達の美優が来る」
あぁ、千恵の話で毎回出てくる女子の子か。
千恵は特に妹ちゃんと美優って女の子と仲が良いらしく、俺に毎回自分の友達について熱く語ってくる。正直どうでもいいが、黙って聞いた方が早く終わるという事に気が付いたので俺は脳みそを空っぽにして千恵の友達話を聞いている。
しかしその中でも里奈と美優って女子の子を覚えているのは、それだけ千恵がその二人と仲が良いのだろう。
「俺出ていこうか?」
3人で集まるなら俺は邪魔かと思うので、千恵にその旨を伝えた。
「うん?あ、いやいや兄ちゃんは家に居ていいよ。ていうか居ないとダメ」
「・・・?」
なんだ居ないとダメって。
そんなに俺に対して自分の友達を見せつけたいのかこの女。
ぴんぽーん。
「あ、きたかな」
噂をすれば何とやら。
そのタイミングで丁度自宅のチャイムが鳴り、千恵がいそいそと玄関に向かう。
数分後、玄関から千恵と美優と思われる女の子の会話が微かに聞こえてきた。
キャッキャウフフしてるみたい。
女の子ってなんで友達に会うだけでこうも盛り上がれるんだろう。
俺友達居ないから分からないけど、出来たとしてもそんなリアクション絶対しない自信がある。ていうか出来ない。
会話がある程度終わったのか、足音が近づいてくると思うとリビングへの扉が開いた。
「あっ!あなたが噂の武流先輩ですか!?千恵からよく聞いてます!会いたかったんです私!」
「・・・」
うわぁ、絶対めんどくさいじゃん。
青春=ぼっちの男 ~ぼっちの俺にささやかなラブコメを~ 最東 シカル @sisin1017
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