とある日の4歳児

various(零下)

とある日の4歳児

「ママー、パパー。あのね、お祭りに行きたいの。ポテト食べたーい」

「ねえ、貴方。お祭りって、今、やってたかしら?」

「まだ六月だから難しいんじゃないか? 七月になったらするだろうけど」

「ごめんね、今ね、お祭りはやっていないのよ。明日、フードコートでポテト食べよう?」

「いやー。お祭りのポテトがいいのー」

「うーん。困ったわね」

「あのねー、ポテト食べてねータコさん食べてねーイカさん食べてねーお好み屋さん食べてねーそれでねー」

「食い物ばっかりだな」

「それでねー、マグロ釣りたいのー」

「……マグロ? 金魚じゃなくて?」

「マグロ釣るのー」

「……マグロは釣れないだろ」

「あのね、マグロはいないけど、金魚ならいると思うわよ」

「いやー! マグロじゃないといやー! ぶー」

「おい、食事に集中させないと」

「そうね。さあ、ごはん食べようね」

「いやー。ぷいー」

「いらないのー? じゃあママが食べちゃうよー」

「いやー! 食べるのー!」

「はい、どうぞ」

「……いやー。ぷいー」

「じゃあママが食べちゃいます。いただきまーす」

「いやー! 食べるー」

「はい、あーん」

「……ぱく」

「うーん。どうしたのかな。ご機嫌ななめね」

「そんなにマグロを釣りたいのか」

「ポテトが食べたいんじゃない?」

「いや、きっと祭に行きたいんだろ」

「ちがうもーん。ブー!」

「あら。じゃあ、どうしてご機嫌ななめなのかしら」

「うーん……」

「……」

「……」

「ぐう〜」

「……寝たな」

「寝たわね」

「もしかしたら寝たフリかもしれないぞ」

「あら、どうして寝たフリをする必要があるの?」

「それは……きっと、食事をしたくないからだろう」

「私の作るご飯、そんなに不味いの?」

「いや、美味いよ。美味いけど……」

「……美味いけど?」

「カレーとシチューしか作れないのは、流石になんとかしてほしいな」

「月曜日カレー、火曜日シチュー、水曜日カレー、木曜日シチュー、金曜日カレー、土曜日シチュー、日曜日カレー。貴方、明日はカレーよ!」

「お祭りのポテト食べたーい!」

「あら、起きたわ」

「……」

「……」

「カレーとシチューに入っていない芋が食べたいな、俺も……」

「……ごめんなさい、私も食べたい……。明日、フードコートでポテトを食べましょう」

「その前に食事のレパートリーを増やせ!」

「マグロ釣りたーい!」



【了】

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