あなたの記憶が記録に置き換わる前に。

 主人公は人形師として、順風満帆の日々を過ごしていた。しかしある日、地震が主人公を襲った。主人公は咄嗟に自分の人形をかばって、脳に怪我を負った。
 その日から、愛弟子との会話がかみ合わなくなり、雑誌は同じところを繰り返し読むようになった。何かが、おかしい。そう感じた主人公は、誰にも相談することなく、病院を訪れる。すると、主人公の脳に、ある病が巣くっていることが判明する。主人公は焦った。
 人形にあることを移植することで、その病から逃れようとしたが、人形は逃げてどこかへと行ってしまう。それからは、弟子に看病される日々が続いた。
 人形師であった主人公が、まるで生ける人形と化している。それは何とも皮肉な状態であった。しかし、逃げ出したはずの人形が帰ってきた。あるものを移植されても、自分を保ったまま。
 主人公は思う。強くなりたい、と。

 愛と記憶と、生きる希望の物語。

 是非、御一読下さい。

その他のおすすめレビュー

夷也荊さんの他のおすすめレビュー1,211