第3話

翌日も同じコースを歩いた。


目の錯覚に怯えていては、この先散歩コースが限定されてしまう。


そんなものに負けたくなかった。


また、はっきりと気のせいであると断定しておきたかった。



いつもの少し上りの道を行く。


道の頂点で、やや右に曲がる。

そのまがった先の右側に岩はある。


つまりゆるい登り坂を上り切って進行方向を見た瞬間に視界の右端に映り込む位置だ。



今日は視界の端ではなく、最初から真正面で見てやる。


その岩の少し斜め上から外灯が照らしているはずなので、ちゃんと見ればまま違うことなど考えられない。


そうして、坂を上り切ると同時に視線を右に向けた。



あっ!


今日に限って本当にお婆さんが座っていた。


何でタイミングで、よりにもよって本当におばあさんが座っているとは。



岩を見るつもりでまじまじとそちらに向いていたので、変に視線を合わせてしまうといたたまれないので視線を外して連れている犬を見下ろす。



そうやって一瞬、視線を外したのちにその老婆は岩になっていた。

やはり岩だったのだ。


今度こそ本当に気味が悪くなってきた。

ちゃんと心構えを持って、見てやろうと来たのに老婆に見えた。

その次の瞬間には岩に戻っていた。



この岩には何かあるのかもしれない。

短い坂の下にある丸い石と共に、何かあるのかもしれない。



その日以来、その道は犬の散歩に使用しなくなった。

あの岩はもう目にしたくない。

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スーホ @suho48

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