日本書紀家族

行木 果実

日本書紀家族

「てんてる〜!教科書貸してっ!」

今日もやかましい妹の声に苛立つ

「天照だって!その呼び方やめてって!教科書貸さないよ!」

「ごめんて天照〜…」

第一、家ならまだしも外でもこの呼び方だから困る。

私は天照大神、双子の妹の月詠には物心付いた時から「てんてる」って呼ばれてる。

実に不服だ、妹に呼ばれるのでさえ不服なのにその妹のせいでクラスのみんなにまで浸透してしまっているから、さらに不服だ。

「で?なんの教科書がないの?」

「歴史の教科書忘れちゃった〜エヘヘ」

「えへへじゃないでしょ…しかも今日私のクラス歴史ないし」

「え〜!ひどーい!」

「しょうがないでしょ!他のクラスの人にでも借りなさい、ほら帰った帰った。」

「む〜ケチ〜てんてる〜!」

「だからその呼び方やめなさいって!」


「ただいま〜」

「おかえりなさ〜い!」

「お母さんなんか機嫌いいね、なにかあったの?」

「ふふふ〜実は今日先生に褒められちゃって」

「あ〜詩の朗読会の」

「そうそう!」

お母さんの伊邪那美は最近町内会の詩の朗読会に参加してる。

どうやら自分の作った詩が先生に褒められたようだ。

「今日の夕飯はカレー?」

「ざんね〜んビーフシチュー」

「え〜でも美味しいからいいや」

ちょっとウザイところもある


「てんてるー!」

ほら来た

「だからその呼び方やめなさいって」

「え〜いいじゃんかわいいし」

「要件聞かないよ」

「ごめん」

「で?要件は?」

「あれ?なんだっけ?」

「えぇ…」

「あっそうそう!ゲーム借りに来たんだった!」

「何のゲームやるの?」

「ドキドキ!学園王子と過ごす366日間!」

「ブフォ!!!」

なぜそのゲームの名を…というかなぜ私が持っていると知っているのか…

「なっ…なんでそのゲーム知ってるの…?」

「この前お姉ちゃんの机の上に置いてあったからやってみたいな〜って」

「人の部屋に勝手に入らないでって言ってるでしょ!」

「あっ…ごめんね〜」

「もう…恥ずかしいんだから…」

「いや〜お姉ちゃんかそういうゲームやるんだなぁって以外だったよ〜

でもね、6番目の王子の西園寺 望くんがかっこよくて惚れちゃった」

「えっ?そうなの?」

「ん、どうしたの?」

「いや、私も望くん推しだから」

「まさか!敵!」

「望くんは渡さないわよ!」

「こっちだって!」

「「シャー!!!!!」」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日本書紀家族 行木 果実 @kanimeshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ