第8話 いい所は黒龍騎士団が持っていくらしいです。
路地でネーゼ達を待ち構えていたのは夜間勤務の憲兵隊だった。皆が槍を構えていた。
「動くな。パブでの迷惑行為だ。逮捕する」
隊長らしき大男が声を上げる。その男はネーゼ達が昼間尋問したバーバリア・クリエスだった。
「私達は正当防衛ですわ」
「言い訳は屯所で聞いてやる」
「私達はミミズの化け物を追っているの。ここ、通してくださいますか」
「訳の分からない事を言うな。大人しくしろ」
バーバリアは聞く耳を持たない。
ネーゼは腕組みをして頬を膨らませている。
「ねえ貴方。ここで道を開けるのと殴られるの。どっちがいい?」
「痛い目に遭いたいのか?」
「そちらが、ですわね」
バーバリアの背後に小柄な女児が現れた。
いきなり尻を蹴飛ばされたバーバリアは悶絶しながらその場で倒れこむ。
彼に注意が集中した瞬間、反対側から獅子の獣人が現れ数人を殴り飛ばした。
その場に現れたのはララとレグルスであった。
憲兵隊は彼らの人相を知っていたのだろう。戦わずに距離を取ろうとしたのだが、ララとレグルスにあえなく倒されてしまった。
「これでは食後の運動にもならんな」
「そうでございます」
あくびをしつつぼやくララに同意するレグルスだった。
「ところでドレッド大佐。ネーゼ様をこのような不審な場所へと連れまわすのは不遜極まりない行為だぞ」
「ええ。承知しております。しかし……しかしですね、連れまわされたのは私の方なのですよ」
「なるほど……大儀であったな」
大口を開けて笑っているレグルスだった。
「ところでレグルス少将。あ奴らは逃げて行きましたが追わなくても大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫だ。連中の拠点は既に黒龍騎士団が襲撃している。そして、例の魔術転送装置も奪還したと報告が入った」
その報告にほっとした表情のドレッドだったのだが、ネーゼは頬を膨らませて不満顔であった。
「あああ! まさか事件は解決しちゃったの?」
「実行犯においては対処が完了しました。ネーゼ姉さま」
「私がふん縛るつもりだったのに残念ね」
「ついでに報告です。今後の諜報活動は黒剣に任せよ。そして、具体的な実力行使は黒龍騎士団に一任する……と」
「それは勅命ですか? ララさん」
「ええ。皇帝陛下からの勅命です。姉さま」
がっかりと肩を落とすネーゼだった。
不満たらたらのネーゼは更に夜の街を徘徊し大酒を飲んだという。付き合わされたトレッドとレグルスは、アルコールが三日三晩抜けなかったらしい。
そして翌朝の新聞には、獅子の魔獣と金髪の悪魔が指名手配されたというニュースが第一面を飾っていたという。
荒野の決闘☆ハドムス帝国への侵入 暗黒星雲 @darknebula
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