第7話 毒蛇ワインの店

「次の店に案内して」

「まだ飲まれるのですか?」

「例のところへ」

「かしこまりました」


 ドレッドはメモを見ながら薄暗い路地へと入っていく。半地下になっているパブがあった。ヴァイパーワインの看板が掛かっていた。


「ここです」

「いい感じで胡散臭いわね」

「そうですね」


 苦笑いを浮かべながらドアを開いて店内へと入っていくドレッド。ネーゼもその後に続いた。


「いらっしゃい」


 出迎えたのはでっぷりと肥えた厚化粧の熟女だった。

 若い男性スタッフを両脇に侍らせている。


「あら。異国の方ね。ハディラは初めてかしら」

「始めてよ。色々お伺いしたい事が沢山あるわ」

「うふ。じゃあそこの席へどうぞ」


 若い男性スタッフがボックス席へと案内する。二名が席に着くとメニューを置いて下がっていく。そして厚化粧の店主がそのボックス席った。


「この店はお酒も料理も一級品よ。今日のお薦めはカモ肉のローストと氷雪のマドンナ。これは超甘口のアイスワインよ」


 店主がメニューを説明する。


「勿論、他の料理や飲み物もお薦めよ」

 

 店主の言葉に頷くネーゼ。


「そうね。じゃあミミズの照り焼きなんてできるかしら?」


 その瞬間、店主の顔が引きつった。


「ミミズ料理なんて出すはずがないでしょ?」

「じゃあ私が作りましょう。素材はそこにいるんでしょ」


 若い男性スタッフが入り口に立ち退路を塞ぐ。

 そして厨房から大男が二名と青白い華奢な男が一名店内に入って来た。


 店主は立ち上がりその男たちの背後へと下がる。


「な……何か勘違いされてるんじゃなくて? 異国の方といえども、ミミズ料理の店などと悪い風評を流されては困ります」

「あら、とぼけるのがお上手ね。年の功かしら。でも、ミミズはそこにいるわ」


 店主の目配せで若い男が二人掛りでドレッドに襲い掛かる。

 ドレッドは軽く体を交わし、二人の頭部をぶつけた。彼らはその場で昏倒した。


「このパブで外国人が何人も行方不明になっていることは調査済みです。それにアルゴル族が絡んでいることも」


 店主が目配せをした瞬間、大男は包丁を手にして襲い掛かって来た。

 ネーゼの後方にいたドレッドは一瞬で彼女の前に出て大男の懐に入り込む。そして掌底でみぞおちを突いた。

 大男はカウンターへと吹き飛んだ。

 もう一人の大男は包丁を構えてネーゼへと襲い掛かるが、その右腕をドレッドの回し蹴りが打ち砕いた。そして側脚で腹部を蹴り飛ばす。その大男もカウンターへと吹き飛んだ。


 店主と青白い華奢な男はその隙に厨房へと入り込んだ。

 裏口から逃亡を図ったのだろう。


「ドレッド。追うわよ」

「了解しました」


 ネーゼとドレッドは厨房へと向かい、そして裏口から路地へと向かった。

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