第5話 廃棄の城

「痛って、頭痛ぇ。」

「まだ治らないの?

医者の検診まだ先よ。」

「それまでに治すんだよ、面倒だからな検査とか。」

「もう、何なのよ..」

いつものように食器を並べ人が集まるのを待つ。だいたい来る順番は決まっており、真っ先にフランケン、少し遅れてゴルゴン、最後に大幅な遅れを取りウィッチが先に着く。密かに来る順番を予想しては当てるというゲームをアクマは行なっている。

「次はゴルゴンさんかな?」

「はっ、はっ..!」

「ウィッチ?」

まさかのハズレ、もはやテンプレートといっていい順番であったのだが。


「どうしよどうしよ〜!」

「何だよ慌てて急にお前。」

「ヤバイんだって!」

「何がよ、食欲ない?」

「何呑気にしてんのよ!

大変なのよあの新入りがっ!」

「フチオくんが?」

「アイツがなんだよ?」

疑問の答えは、形としてそこに現れた

「アオォォォーンッ!!」

「何だコイツ..⁉︎」「あの新入り!」

「これがフチオくん?嘘でしょっ!」

潜在意識がまさかこんな具合に開花するとは、思ってもいない成長だ。

「なんだこれゴリラか!」

「なんかの化け物〜!」

「違うわよく見なさいよ、どう見ても犬でしょ!」


「狼だ。」「ゴルゴンさん?」

「アオォォーン!!」

理性を飛ばして暴れてまわる。

「フランケン、どうにか止めて!」

「無理に決まってんだろ、力無いんだよ俺は。お前こそ魔法使え!」

「あーもうお互い無理な事言わないの

私がどうにかしてみるわ」

「お前何か出来るのかよ?」

「少しだけね、これでも悪魔よ」

掌を軽く叩くと三叉の槍が出現し、先端から薄い光を飛ばす。

「えい!」「ビームか!」

「ウ..アッ...」

獣の身体が硬直し、固定される。

「よし、成功!」「やるじゃねぇか」

「アオォォォン!!」「え?」

「ぜんぜんダメじゃんかー!」

拘束したのはものの数秒すぐに解かれて猛威を戻す。

「どうすんのよ!」

「なんだよ、結局お前もかよ?」

「..ねぇ、アレ何」

「え、どういう事?」「椅子が..」

ポルターガイスト現象の如く、椅子が宙に浮いている。そのままその椅子は三人目掛けて飛んでいく。

「うおっ!」

「こんな事まで出来るの?」

「どうすりゃいいの〜!?」


「目を塞げ!」

「塞げったってどうすりゃいいよ!」

「マミー!」「………うン..。」

ミイラの包帯が目元を捉え、隠すように丸く巻かれる。

「アオォ!アア‼︎アオォ..ア...ォ..。」


「身体が元に、小さくなってくぜ。」

「何なのコレ?」

「思いっきり実験体だねー。」

「もういいぞ、マミー」「………」

眼鏡を掛けさせ部屋の隅へ運ぶ。少年は完全に気を失ってしまっている。

「ゴルゴンさん、コレって..」

「狼男だ。」

「狼男?

月をみたら化けるってやつか」

「あ、そういえば窓の外のある部屋にいってたなー。」

「でもおかしくない?

ただの狼男なら、あんなに強い力は持たない筈よね。」

「..施設にいた頃、被験体に超能力を植え込む実験が行われていた。おそらくそれの残党だろう。」

ヨウカイの遺伝子を入れた者に超能力を与えより強化を施すといった無謀な思想によって彼は記憶、自らの名すらも忘れてしまっていたのだ。

「実験体に使われた被験者は皆副作用や異常反応によって何らかの影響を受けた。成功者は一人もおらず、言うなれば〝完全な失敗作〟だ。」


「完全な、失敗作..!」

初めは疑問に思っていた。

何故こんな少年がここに来たのかと、

しかしわかった。彼は来るべくして此処に来たのだと..。

「フチオくん、言っていたわ。

ゴルゴンさんのピアノの演奏を聴いて〝何処かで聞いた事がある〟って」

「記憶が残っていない筈なのだがな、覚えているとは。」

「ワタシが気が散るとか言っちゃったからかなー。」

「いや、私が目を離して御飯の支度しちやったから。」

「やめろよそういうの、譲り合いってやつか。面倒くせぇ」

謝罪の念を表に出すのは見苦しく気持ちが悪い。ただ思うだけならどれだけ楽か。


「でもこれからどうすんの?

あの子すっごい危険だよ〜。」

「決まってるだろ」

「同感。」

「それしかないわね。」

「………うン..」

みなの気持ち決まっていた。責任感では無く真実追求の為ではあるが。

「コイツの記憶が戻るまで、住人として一緒に過ごす。」

「戻った後は?」

「復讐でもしに行きましょうか..」

「おーもしろそ〜。」

「………ソウダネ..」

出来損ないは潰れる前に立ち上がる。

                完

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