第2話 強襲‼中央共産連邦海軍連合艦隊

六月一日 午前三時零分佐世保鎮守府では輸送船に海兵隊が次々と乗り込んでいった。海兵隊の将兵はまだどこに向かうのか知らされておらず、大半の将兵は朝鮮半島に強襲をかけると思っていたが出航して二時間後の午前五時に上陸船団のスピーカーから第一機動部隊司令長官角田中将からアフリカ連合の海軍を叩き、海兵隊をエジプト沿岸部に空襲した後に上陸し、占領。海軍部隊は大西洋打通を行いワシントンに空襲を行うことが知らされた。

 中央共産連邦主席習近平の子孫の主午安は陸軍諜報部より大本営から海軍暗号で打電していることが発覚し、帝国海軍主力艦隊の出撃が近いと考え、持てる空母機動連合艦隊を組み海軍力の三割を出撃させた。旗艦隊は第一空母艦隊。旗艦は広東だった。

 帝国海軍は、第一機動部隊から彩雲索敵機朝鮮方面の海域に向けて索敵機を発艦させた。それに続き第二戦略空母機動部隊は双発攻撃機銀河を台湾方面に出した。その他随伴艦で軽巡クラスは水上偵察機を発艦させて太平洋方面に索敵機をだした。

 午前五時十五分朝鮮方面を索敵機していた第二戦略空母機動部隊所属銀河索敵隊は上海に人民解放軍海軍旧式空母西安型五隻その他随伴艦三〇隻を発見し、打電するとともに低空飛行をして作業内容を確認すると艦載機を積み込んでいた。それを確認した銀河は翼下にある五〇〇キロ爆弾二発を投下した。着弾場所は積み込み作業中のクレーンと運んできた艦載機を乗せた桃のトラックだった。クレーンは根元から折られ吊り下げていた艦載機が地面に叩きつけられて炎上していた。

 トラックは荷台を突き破って地面が跳ね上がりそれに埋もれてしまっていた。

 銀河から報告を受けた第二戦略空母機動部隊は銀河索敵機にその機動部隊との接触をたもつように指示した。それとともに第一機動部隊に中国海軍機動部隊が出撃準備を進められていることを伝えた。人民解放軍の機動部隊が出港準備をしていることが第一機動部隊やその他艦隊に知れ渡り第三巡洋戦隊をその艦隊の監視に差し向け、攻撃隊の攻撃目標が決定し、角田は発艦準備を命じた。

「攻撃隊出撃準備、発艦開始予定時刻午前六時三十分‼」

第一次攻撃 第一波攻撃隊 赤城 烈風十五機 彗星十三機 流星八機

             加賀 烈風十七機 彗星十五機 流星七機

             飛龍 烈風十三機 彗星十五機 流星一〇機

             蒼龍 烈風一八機 彗星一〇機 流星二〇機

             翔鶴 烈風二五機 彗星五機  流星五機

             瑞鶴 烈風二十機 彗星一〇機 彗星五機

             葛城 烈風二三機 銀河(対艦爆装)二〇機

             大鳳 烈風二〇機 銀河(雷装)二八機

             信濃 烈風二七機 流星(対地爆装)二三機

命令を受けた整備員は非番を除き、格納庫の中で魚雷や爆弾を取り付け始めた。

午前五時四十分に接触を続けていた索敵機より「敵機動部隊錨鎖巻き上げを開始。出撃するものと認める」と打電してきた。司令部は発艦開始時刻を早めることを整備員に伝達した。

午前六時零分に出撃機数の半分は出撃準備が整っていた。この半数で出撃させることが決まり、出撃準備がされている機には準備完了後即刻発艦を命じた直後、第一機動部隊赤城所属彩雲索敵機より敵大規模機動部隊を認める。空母九隻その他随伴艦四十隻以上を確認。尚、上空警戒機は認められず。我が艦隊に向けて移動中。」

これを受けた司令部に衝撃が走った。第一機動部隊の司令部だけではなく、第二戦略空母機動部隊の司令部も上海に停泊中の機動部隊のみが近海に存在していると思い込んでいた。

だが、それとは逆に中央共産連邦海軍は朝鮮半島の奥に機動部隊を隠し、旧式の西安型五隻の機動部隊を上海に配置し、あえてこの機動部隊のみがこの海域にあると思い込ませて攻撃隊を発進させたところで第一波攻撃隊を送り込み、艦載機による抵抗が少ない状態で空母を撃破して西安型空母を攻撃してきた攻撃隊を海に不時着させるか、やり残した空母に着艦させ、出撃準備中を攻撃しようとしていた。

が、第一機動部隊の彩雲索敵機に発見されたことによりその作戦は使えなくなった。正面切って空母決戦を行えば間違いなくこちらが大損害を負う可能性が大きい。潜水艦で帝国海軍機動部隊を奇襲するのもよいが衛星画像で水雷戦隊を多数確認しているため、送り込んでも水雷戦隊の精鋭、ハンターキラーに追い回されて全滅がオチだ。基地航空隊と空母航空隊を併用すれば断続的に空襲をおこなうことが可能で、インドでフィリピン海軍空母部隊が使用した旧式戦闘機より多少攻撃能力が高くても継戦するには空母に着艦しなければならない。しかも、空母は発艦と着艦を同時に行うことができない。同時に発艦、着艦を行おうとすれば燃料、弾薬の蓄えに偏りが出て補給線に補給を受けることになる。

そうなれば空襲をし続ければいつかはチャンスが回ってくる。そこを狙って攻撃すれば帝国海軍は主力機動部隊を失い、陸軍は人員に大きな穴ができて次期作戦どころか香港への進駐すらできなくなる。そうなれば、帝国海軍は攻勢の限界点に達し、戦況は逆転するはず、帝国海軍には大型機動部隊を保有していたとしても士気は必然と下がる。国民にも英雄の機動部隊が消えたことを弁明することはできまい。そうなれば、国内で反戦運動が始まるはず。そこで我々が講和を持ち掛ける。講和を持ち掛ければ国民に押されて講和するはずだ。

このような結論がでた中央共産連邦海軍司令部は朝鮮半島方面に展開中の第一連合機動艦隊旗艦クズネツォクに命令書を乗せた戦闘機を送った。

中央共産連邦海軍第一機動部隊司令グレース・ホック大将は出撃して三十分で帝国海軍主力機動部隊の索敵機に発見されたので脳内は嫌な予感しかなかった。

その嫌な予感を悟ったのかどうかはわからないが第一機動部隊司令角田中将は第二戦略空母機動部隊は新しく発見された機動部隊、第一機動部隊は最初に発見された空母機動部隊を攻撃することになった。角田は二つ目の機動部隊が見つかったのだから三つ目が発見されてもおかしくないと思っていたのだが、新しく発見された機動部隊と上海の機動部隊以外日本海、東シナ海に展開されていない。角田は南シナ海まで索敵機を飛ばすように第二戦略空母機動部隊に命じ、午前六時四十五分が出撃予定時刻だった。

一方第一連合機動艦隊では午前六時三十分に攻撃隊の発艦作業が終了し、帝国海軍機動部隊へ侵攻していった。

第一機動部隊は第二次マリアナ海戦と違って先手をうつことができなかった。だが、その遅れを埋め合わせするのは世界随一の練度だ。

中央共産連邦海軍第一連合機動艦隊より十七分遅れて全機発艦完了したのだが、発艦準備完了機次第出撃せよと角田が命じていたため、どちらかといえば帝国海軍機動部隊の方は発艦開始が早く既に四分の一を飛行していた。

一方帝国海軍横須賀鎮守府ではテントを連結してその中に通信設備を入れていた。くれ鎮守府は横須賀鎮守府へ択捉型海防艦二隻を送り、東京湾防衛の任で送り出した。

佐世保鎮守府では中国の偵察衛星の通信が頻繁になっていることが判明し、撃墜することを佐世保鎮守府長官が御前会議で決定されたことを彩雲で直々に伝えに来た。

佐世保鎮守府には大型対空連装砲が二基四門試験配備されていて、諜報衛星の情報をもとにして射撃する仕組みである。この大型対空連装砲はレールガンの方式を採用して、音速を超えて、マッハ6の速度で打ち出せる。さらにこの対空砲は小型ながら、強力な威力を持っているため再装填は時間がかかるものの三式弾を発射することも可能である。

帝国陸軍呉防衛師団所属第三諜報班が中国のスパイ衛星を発見、補足したことを海軍佐世保鎮守府に打電した。「敵諜報衛星補足。高度四〇〇キロ、対空徹甲弾ノ使用ガ有効ナリ。射撃時刻〇七〇〇」

佐世保鎮守府はこの電波を受信し、対空徹甲弾の装填を命じ、射角八〇度で真西に砲身を向け、射撃準備を命じた。

海軍佐世保鎮守府対空科大型連装対空砲砲術隊長大橋大尉はこの撃墜命令に不安しかなかった。「この作戦で主力機動部隊の動向を観察されて先回りされるのを防ぐことにつながることは分かるが、今まで軍機分類の防衛決戦兵器の射撃演習を行ったことがない、しかも攻撃目標が射程外でぎりぎりまで目標を引き付けて発射して、その後は砲弾の墳進力で目標を撃破するのはあまりにもハードルが高い、万一撃墜に失敗した場合はこの対空砲の存在と座標が露見して、ここに向かって航空隊の爆弾と弾道ミサイルの雨が降ってくるに違いない。そうなれば、もう本土決戦か海軍艦隊が一度でも守勢に回るようなことがあれば消耗戦に引きずり込まれてしまう。オーストラリア海軍に援軍を頼んだとしても間に合うはずがない。フィリピン海軍は軽空母が六隻、正規空母にいたっては二隻しかない。敵軍の大規模侵攻が始まるとすれば空挺も予想されるがこの対空砲の生き残りがあることを恐れて海上輸送で上陸戦を展開してくるほかない。勿論、敵もバカではないから人民解放軍海軍を基幹とした機動部隊を護衛につけて人海作戦に打って出てくる。海防艦が竹島、尖閣諸島を砲撃して立て籠っていた守備隊は降伏した。だが、自分が敵軍司令ならこの島は日本を監視するのにちょうどよい位置だから大規模艦隊を派遣してでも守り抜く。

日本本土に上陸するならこの島は補給する中継地にできる。だが、なぜこの島々を放棄した…。スパイ衛星と交信するのも頻度に行えば必然と衛星の場所が無線探知で敵軍にバレて撃墜されるかもしれない。衛星を攻撃できるのは防空ミサイル艦、地上対空ミサイル基地、例外でこの大型連装対空砲だけ。敵軍からすれば帝国海軍の動向を観察するものを破壊されるが、確実に命中を期待できる攻撃をするならばスパイ衛星を照準器とした対空戦闘になる。日本が打ち上げた偵察衛星は二機。しかも、一機はアメリカ上空で偵察している。それくらいは敵軍も把握しているはず。まさか敵の狙いは最初から衛星破壊兵器を使用させることではないだろうか。地下に隠してあったからまだ存在に勘付いてなかったが、こんなにでかい砲身だ。いくらこの鎮守府の壁が二メートルあったとしても大きすぎて隠し切れない。もう既に壁の外で何人か群がっている。周囲に山があって中を見られるようなことがないということはない。となればどこかで動向を監視している敵国の諜報員がいてもおかしくない。」

そう思った大橋は作業を継続せよと部下に命じ、鎮守府長官室へ駆けて行った。

佐世保鎮守府長官笹田少将は大橋が長官室に飛び込んできたので驚いていたが、話を聞いて心配無用という顔で言った。

「安心したまえ。たった今憲兵隊が周辺の山々に不審な一行を発見して取調室にぶち込んだらしい。アメリカ、中国の諜報員だったとか。」

「では、壁も周りで例の対空砲を見物している民間人はどういたしましょうか。」

「戦車で追い散らした。」

「ずいぶん強引な方法ですが、軍機なのでしかたないですね。では、自分はこれにて任務で戻ります。」

 敬礼して長官室をでた大橋は安心して部下とともに万全な態勢を整えていった。

 一方、東シナ海で空母決戦をしている帝国海軍機動部隊では午前六時四十五分に第一機動部隊の攻撃隊が主力機動部隊上空に到達した。上空警戒機は四十機でやや多めだったがそれを突破した攻撃隊が敵艦隊の打ち出す強力な対空弾幕の中に突っ込んだがあまりにも弾幕が濃すぎて、第二次マリアナ沖海戦のように肉薄できず、駆逐艦三隻を撃沈したに過ぎなかった。対する第一機動部隊の損害は艦戦二機、艦爆四機、艦攻が六機だった。

 中央共産連邦海軍第一連合機動艦隊の送り出した攻撃隊は帝国海軍、第一波攻撃隊の先に出撃した攻撃隊に発見されないように迂回しながら新進撃していたが、遅れて飛び立った第一波攻撃隊の後半部隊に発見されて烈風に追い回されていた。こちらの最新鋭戦闘機殲30の四分の一が帝国海軍の攻撃隊に襲い掛かろうとしているが、直掩隊に気づかれて逆に追いかけられている。それに対してこちらの攻撃隊には烈風がちらほらと集まってきて、殲30が追い払おうとすると烈風が威嚇射撃をして動けなくされたり、それでも反撃に移ろうとした機は集中砲火を受けて空中分解してしまっている。これはもう無理と思ったのか先頭を行く飛行隊長が降参の意を示す信号弾で必死になって抵抗しないことを伝えた。それにならって列機も降参していった。そして、無線から中国語で兵装を投棄せよ。不審な行動、指示に逆らった、もしくは急な運動を行った場合即時撃墜する。」

 隊長機が魚雷を切り離し、対空ミサイルを落下させた。そして後部銃座も予備弾薬と旋回機銃を取り外し、投げ捨てた。すべての機が兵装をなくしたと思われた時、一機だけいまだ爆弾を落としても対空ミサイルを落としていない。そして、後部機銃座の搭乗員は烈風に向かって舌を出していた。そうしていると再度指示があった。

「直ちに対空ミサイルを投棄せよ。十秒以内に完了しない場合撃墜する。」

 追いかけてくる烈風一機がその機の後ろについた。そして撃墜までの時間を示すカウントダウンが始まった。十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、ゼロ。ゼロと告げられた瞬間に烈風から二十ミリ機関砲弾が打ち出されその機に吸い込まれていった。その弾は狙いたがわず命中し、その機は火を噴いて落ちていった。落ちていく機を見て呆然としているとまた通信が入った。「指示に従わなかった場合撃墜する。これは脅しではない。今のようになりたくなければ指示に従え。」その烈風隊は沖縄県陸軍那覇飛行場へ連れられて行った。那覇飛行場からは烈風十七機が派遣されてきて、午前八時に空母瑞鶴に危なっかしい着艦した。

 投降した攻撃隊の後ろで空戦をしていた殲30は烈風隊に次々と撃墜されて、全機未帰還となった。

 帝国海軍第一機動部隊第一波後半の攻撃隊は前半の攻撃隊よりも熾烈な弾幕を潜り抜け、駆逐艦一隻を撃沈、空母三隻を小破させ、一隻を中破させた。後半の攻撃隊の未帰還機数は艦戦なし、艦爆二機、艦攻七機だった。

 一方上海の機動部隊を攻撃していた第二戦略空母機動部隊の攻撃隊は航続距離が長い、双発機なので艦隊上空で旋回し、全機発艦するのを待っていた。そして、予定時刻よりも十分早く発艦を開始し、二十分で発艦を完了し編隊を組んで進撃して行った。

 この攻撃隊は首尾よく空母三隻を撃沈し、二隻の重巡を大破させて行動不能にした。

 第一機動部隊艦上では被害の多さに驚いたが次の攻撃隊を送り出すべく、第二波攻撃隊の編成を命じた。

 一方、攻撃隊全機が未帰還になった第一連合機動艦隊は地上航空基地に協力を要請し、帝国海軍の主力機動部隊を撃滅しようとしていた。

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第一機動部隊 @kuwanayuuki

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