説明されることの恥ずかしさ

  • ★★★ Excellent!!!

太宰治は器用な作家である。彼ほどのペテン師はそうそういるものではない。お酒を飲んでいる。男は甘えてくるから年をとるほど厄介になる。しかし、当の本人はその厄介さを存在を認めるための一つの道具としてしか見ていない。その滑稽さを太宰ほど見透かしていた作家は、日本にはちょっといないと思う。hiphopを最も理解していたのは太宰治である、という文章が組み立てやすい。それほど太宰は相手に理解されていると思わせる。その技術の根幹にはトートロジーがある。主題とそれに付随する副題の組み合わせ方が、好奇心よりも既知に定住する態度に認められる。彼はあたかも、間違ってここに文章があるかのように読者に思わせる。その技術を盗むためには課題意識を忘れる必要があった。

レビュワー

このレビューの作品

希望ノ街

その他のおすすめレビュー

saさんの他のおすすめレビュー26