主人公は、ネットカフェ難民から生活困窮者自立支援制度によってパン工場の正社員となった青年
仕事は大変で、給料は安く、同僚と愚痴を言い合いながらも、それなりに過ごしていた
しかし、彼の過去には、彼自身も知らない闇が隠れていて──という内容の本作品、全編通して滲むリアリティと、それに裏打ちされた人生の無常が見事に表現されている
それが、あまりにも、つらい
だが、彼の人生は過酷ばかりではない
彼が築き上げてきた人間関係が、最後に彼を救ってくれる
ネタバレは避けるが、そのラストに、読者としても本当に救われたような気持ちになった
そう長い作品ではない
是非一読して、この感動を味わってほしい
重く、辛い過去を抱えて社会の底辺に身をやつしながらも、懸命に生きる男性の姿を描いた作品です。
とある事情から児童養護施設で育った主人公。そのせいか、物語全体を通して暗く、重い印象で進んでいきます。
施設を出てネカフェ生活が始まり、生活困窮者自立支援制度を利用してどうにか工場勤務を掴み取る。そんな彼を取り巻く環境もまさしく“底辺”で、日々単調な工場勤務をこなしながら、時折、気の合う友人と酒を飲むだけ。
こうして、まさしく人生をこなしているような日々はどこまでも陰鬱で、だからこそリアリティがあります。
そんな日々に変化をもたらすのが、行きつけのバーでバイトをしていた女性。彼女との何気ないやり取りが、少しずつ主人公が見る世界を変えていきます。
それは同時に、主人公が“自分”と向き合う生活の始まりでもありました。
自分と、社会と向き合う中で何度も何度も挫折して、絶望して、落ちていく。さらに、己の過去が前へ進もうとする彼の足を引っ張ってくる。そうして転がり落ちた先にある、本当の“底”。
真っ暗な世界から見上げたからこそ見えた“光”とは…。
現代社会の救いの無さと、それでもそこにある光を、リアリティのある暗さで描いた、現代ドラマらしい作品です!