重く、辛い過去を抱えて社会の底辺に身をやつしながらも、懸命に生きる男性の姿を描いた作品です。
とある事情から児童養護施設で育った主人公。そのせいか、物語全体を通して暗く、重い印象で進んでいきます。
施設を出てネカフェ生活が始まり、生活困窮者自立支援制度を利用してどうにか工場勤務を掴み取る。そんな彼を取り巻く環境もまさしく“底辺”で、日々単調な工場勤務をこなしながら、時折、気の合う友人と酒を飲むだけ。
こうして、まさしく人生をこなしているような日々はどこまでも陰鬱で、だからこそリアリティがあります。
そんな日々に変化をもたらすのが、行きつけのバーでバイトをしていた女性。彼女との何気ないやり取りが、少しずつ主人公が見る世界を変えていきます。
それは同時に、主人公が“自分”と向き合う生活の始まりでもありました。
自分と、社会と向き合う中で何度も何度も挫折して、絶望して、落ちていく。さらに、己の過去が前へ進もうとする彼の足を引っ張ってくる。そうして転がり落ちた先にある、本当の“底”。
真っ暗な世界から見上げたからこそ見えた“光”とは…。
現代社会の救いの無さと、それでもそこにある光を、リアリティのある暗さで描いた、現代ドラマらしい作品です!