岩田屋フライデー

イベント中止の影響で、遺書が届きました

「この１～２週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベントなどは大規模な感染リスクがあることを勘案した」

　政府の発表があって数日後、風見のもとに手紙が届いた。

　差出人は、取材を通じて懇意になった、小さな会社の社長だ。

　どこかで発表してほしい旨が書かれていたので、一部抜粋したものが、以下の文である。

「（前略）

　社会に出てから、ずっと真面目に働いてきました。

　ある日のこと、国の手先が会社に訪れて、我々のミスを追及します。

　悪いことをして私腹を肥やしている連中は、誤魔化すのがうまいので、手間になるし、そこまで搾取できない。

　だから、悪いことをするつもりはなく、単純に知らなくてミスを犯した私たちが狙われました。

　いくら話しても、私たちが悪者と国はしたいようです。

　本当に知らなかっただけでした。

　そのルールを教えてくれなかったのに、教えないのは悪いことではないようです。けど、知らなかったではすまされないので、罪を償え。

　金を搾取されます。

　けど、金を払えと日本国に言われても、悪いことをしていないので、お金を返せるあてもありません。だから、国に借金することとなりました。

　死にたいと思いましたが、家族や社員の力もあり、生きて死ぬ気で働こうと決めました。

　最近、なんとか大きな仕事に参加できるようになったのに、国のせいでその仕事が中止となりました。

　ウイルスではなく、私は国に殺されるのです。

　国の対策の影響で、借金の一部返済と社員への給与支払いが不可能になりました。

　お前らが、国民になんの対策をしていないと思われたくないがために、エンタメ業界がやり玉に上がった。

　バカにもわかりやすいもんな。人が集まるのが危険だっていうなら、満員電車もオフィスも同じだろうが。

　お客様は、残念です。それだけで、すんだとしても、こっちは仕事なんだよ。なんで、狙われなきゃなんないんだ。

　死にたくはありませんが、私は保険金で借金返済と、給与の支払いをします。

　お前らが、知らなかったではすませないと、借金させてきたときにも死にたかった。でも、死ぬ気で頑張ってどうにかしようとして、目処が立ったところで、これだよ。

　死ねってことだな。

　望みどおり死ぬのは、しゃくだなぁ。

　子供の成長を見届けたかった。苦労ばかりかけた妻にも、いい思いをさせてやりたかった。

　死にたくありませんが、他に方法がありません。

　感染対策をするにしても、損をする人間を一部のものだけにするやり方は納得いきません。

　お前らが決めた方針で、死ぬ人間は私だけとは限らない。

　責任の一端は、お前らにあります。

　そんなこと知らなかったとは言わせないぞ。

　知らなかったではすませない。金を払え。

　悪いことをしていなかった私にのべた、お前らの名言だよ。ばーか」

　ご冥福をお祈りします。