「異種間恋愛」と括るなかれ。自身の生きる意味を問うた先にある、純粋な愛

「異種間恋愛」というジャンルがあります。種族の違う二人がその垣根を越えて愛を結ぶ物語を、そう呼びます。
本作も、紛れもなくその定義に当て嵌まるでしょう。
しかし私はこれを、ただ単に「異種間恋愛」という括りにはしてしまいたくないと思いました。

なぜなら、本作には恋愛以上に、二人の主人公がそれぞれに「自分は何のために生きるのか」と人生の本質を追求する姿が、印象深く描かれているからです。

異形の仲間を集めて人間を襲い、略奪を繰り返して生きる鬼人・ネイル。
盲目であることで邪魔者扱いされ、孤独に生きてきた貴族の娘・クレア。
メインとなるこの二人の人物造形が素晴らしくて、序盤からものすごく惹き込まれます。
生まれ育った環境や、それに伴う思考と言動。
丁寧に描き出された彼らの人生に、確かな重みと奥行きを感じました。

紡がれる一つ一つの選ばれた言葉、独特の比喩を交えた言い回し、そして胸を打つ心の叫び。
毎回ぐっとくる表現があり、文章を追う喜びもあります。
雪羽さんの作品はどれも読み応えがありますが、本作では特に、うわぁぁSUKI……!と語彙消失すること数知れずでした。

仲間を失ったネイルと、肉親から見捨てられたクレアは、何を生きる礎と見定めるのか。
ラストは心がじんわりと温かくなり、とても満たされた気持ちになりました。

異種間恋愛が好きな人に刺さるのは勿論のこと。
生きる道に迷う主人公たちが踠きながらも前に進もうとする姿は、多くの人の胸を打つこと間違いなし。
もっともっと読まれるべき、素晴らしい物語です!