「どっか行けしっしっ」となる奴

祝日明けは個人的にダメージ抑え目なんだけど、わかる人いる?分からない?ならばそれでよろしい。

土日が終わって学校!となると海鮮一家のエンディングのせいでデバフが掛かって持病がひどい発作を起こしたまま引きづってしまうのだけれど、月曜というワンクッションおいた社会人にとっては休日ですらないというあの、ブラック会社に務めてますよ的無理な愛想笑いを浮かべる女子アナを見ると興奮もとい奮起してちょっとはやる気出る。彼女達のおかげで平日のルーチンに無理やり体が当てはまって動くのだ。

猫っ毛気質な髪を今日も自由に跳ねさせた背中まである髪を気持ち整えて玄関を出る。


「ってきマース」

「はい、いってらしゃい!」


母さん、朝から元気です。アタシはほんとにあの人の娘か?ああでも弟は確実にあの人の遺伝子引いてるわ。

朝もラクロス!昼はラクロス!夜?ラクロスだぜッな弟です。因みにルールは知らない。あんなのアニメの世界限定スポーツだと思ってた。

だいたいあんなあみあみでボールは打ち返せるのだろうか?あ、キャッチする用とか?

後でルール調べよう。弟の趣味の詳細を数年単位で放置する姉。……なんかエロい。


通学路の道を歩いて進む。二十分も歩けば学校に着くし、アタシはいつもこうやってゆっくり行っている。嘘ですごめんなさい、自転車に乗れないだけです。座高の関係で三輪車にも乗れなくなった。交通弱者すぎでは。

今作った交通弱者という単語を吟味しながら、何かここからフェチズムを刺激できるような要素がないかと検討していると目の前を黒猫が通り過ぎていった。

交通弱者から複数プレイまで思考が吹っ飛んで旅をしていた頃にそれはまあ見事に黒いのが通り過ぎたので、一瞬なんだと二度見した程だ。因みにどうして複数プレイにまで発展していたかを説明していたら途中で日本語が文字化けすると思う。

黒猫は黄色い目をこちらに向けてじっと見つめてくる。アタシも目を合わせてじっと見つめてみる。それはひとえに黄色い目と言っても中には僅かに緑や赤、橙色が混じっていて何らかの魔力を帯びているようだった。黒魔術とかが好きな自称スピリチュアル主義者ならば彼の目をお守りにすると言ってくり抜きに行きそうだ。きっとそれは動物愛護団体の過激派ヤクザとの戦いに発展するが一切を気にしないんじゃないだろうか?いやだいやだ、そんな奴とは関わりたくない。……後者とは既に縁が出来てしまっているけど。


「にゃーお」

──あの子……


「ん?」


ピンクの可愛らしい腔内を外気に晒して、喉を震わせて発せられたこれまた可愛らしいにゃーおの鳴き声は、しかしその後聞こえるはずもない100%人間の言葉でもってアタシの鼓膜を震わせる。

あれ聞き間違えか?さっきあの猫喋った希ガス。


「にゃん」

「あ、まて。…………まてゴリャア!」


何となく叫んでみた。猫さんびっくりしたようで、登った塀から落ちてやんの。なんかごめん。

それにしてもいよいよアタシの耳も狂ったか?変態性癖または人格に問題アリの音楽家達の作品を聴きすぎてついに耳まで壊れたらしい。そうでもなければ畜生共の声が聞こえるなんてメルヘン女の妄想みたいな展開になるはずがない。小説じゃ無いんだぞ!


小説じゃ無いんだぞ!(意味深)


一悶着あったものの、その後たっぷり寄り道をして生えている草を片っ端から食べていく勢いで登校していたら遅刻ギリギリになったでごさる。

それもこれも全部黒猫が横切って行ったからだと思う。余計なことをしてくれた。アタシにかかった呪いはひとつで十分だっての。


「おっはよー。なんか元気ないね?」

「はようござーい。なんだかんだいつもの事でしょ」

「それもそうだったわね」


教室に入ると知り合い以上友人未満な二人に迎えられる。とりわけ先に挨拶してきたのがその一号。名を安福多銭 亜茉莉という。名前の中に泡銭なんて不吉なのが混じっているわりに当てている字がなかなか縁起の良さげな名前だ。


「おはよう、伊吊ちゃん」

「はよう。……何してんの?」

「んー、そこで拾ったんだけどね。なんの犬種かなって」

「…そう。あんまり変なもの触らないようにね」


2号、名を粼 紗来と言う。長く腰ほどまで伸ばした髪はお嬢様という雰囲気を醸し出していて、清純そうなオーラであらゆる不良を退ける。しかし油断してはならない。紛れもなくこれは動物愛護団体の過激派ヤクザ。彼女の混沌としたフェチズムに突っ込んではならない。

多分豚をけしかけられる。獣〇は勘弁して欲しい。らめぇぇぇ!!

ひとまず自分の席に座って荷物を机の横にかける。今月は十一月に入ったばかり。それでも教室内は非常にピリピリしていて、熟年夫婦の離婚秒読み状態みたいな雰囲気だ。カップルの倦怠期にしているケンカとも言い替えてもいい。多分原因は彼がインポだったのでしょう。女の器量が試されるゾ!

亜茉莉も紗来も前はもっとべらべら喋ってたりしていたけれど、さすがに受験期である為か各々勉学に励んでいたりしている。

つらい。何がつらいって、アタシはまだほかの人たちみたいに勉強に向かい合うやる気が出てこないこと。……それでもいいやと思ってしまうこと。


未来は暗く、どうすればいい?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アタシは猫を探すらしい はいどらんじあ @nokonn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る