エピローグ この言葉を聞けたことが、僕へのご褒美だったんだ

 精神の不調(じゃないけど)が戻れば学校に行かなければいけない。

 でも状況は非常に悪い。

 学校中に僕の噂が広まっている。

 数少ない友達の瀧君と有沢さんも僕を疑っている。

 この状況を解決する魔法はない。

 気は重いけど、それが現実。

 事件に巻き込まれて僕はいいとこなしじゃないか。なんでこんな役を引き受けたんだ……

 再び学校に通い始める、その最初の朝。教室に入ると皆が僕を一瞬見た後に視線を逸らす。僕の立場、ないなぁ……

 そこに秡川さんが歩いてきた。どうしたの?

「岸凪君、おはようございます」

 だまり姫の秡川さんが周囲から浮いている僕に声をかけたことで、周囲がどよめく。「あの二人、なに?」とか言われてる。

 いいんだ。いろんなことを言われても。

 この言葉を聞けたことが、僕へのご褒美だったんだ。今ようやく分かった。

 僕も返さないと。

「秡川さん、おはよう」

 当たり前の挨拶。どうしてこんなにうれしいんだろう。

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君の台詞の作者は誰? 村乃枯草 @muranokarekusa

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