ロマン溢れる国家列伝③ 『ロシア』~果てしない帝国~

爆撃project

本編


「彼らが最も礼賛するのは強さである」



◆◆◆◆◆◆◆



 ロシア連邦。


 と聞いて、良いイメージを持つ日本人は少ないだろう。

 北方領土問題を抱え、今だ平和条約すら締結されていない日本とロシアは、親しい国家とは思えない。

 歴史上も幾度となく争った。

 軍事上も脅威となり、日本の平和を脅かしている。


······しかし、ロシアと言う国家単体で見れば、そこまで毛嫌いするような国ではない。

 その歴史や姿勢は、有り体に言って「格好いい」


 これは筆者の私見であるが、ロシアが北方領土を手放そうとしないのも、クリミアに侵攻したのも、戦略上の理由がある(主にアメリカを警戒しての)。別に日本に悪意があるわけではない。


 なんとなく嫌いな軍事大国、美女の多い国、ポルシチ·······そんなイメージが強く、まぁそのイメージは正解の国だが、ここに新たなイメージを加えてみよう。


──閉じ込められた、不運の帝国。




  まずは、ロシアの歴史をほんの少しおさらいしておこう。


 世界最大の国家、ロシアの源流は『キエフ大公国』という国だ。

 キエフ大公国は、現在でいうウクライナで勢力の全盛を迎える。

 しかし平野部にあった為、特出した防御力を持たなかった。

 その為か、モンゴル遊牧民の騎馬軍団に敗北し、滅亡する。

 古代においてロシア民族の国は何度も登場したが、その攻められやすい地形と寒さによる冷害によって、過度な発展を遂げられなかった。


 1263年、『モスクワ大公国』が誕生する。

 モスクワ大公国は今までの領土防御による国家の存続から、侵略で敵を殲滅する国家の存続を目指した。

 それが顕著に現れたのが、イヴァン雷帝の名で知られる英雄『イヴァン四世』で、ウラル山脈より東方への勢力拡大が始まる。


 1721年、『ロシア・ツァーリ国』を得て、『ロシア帝国』が誕生した。

 ナポレオンを敗退させ、日露戦争で戦った国である。

 この頃には現在のロシアとほぼ同等の領土を有しており、世界最大の国であった。

 アメリカに購入されるまではアラスカまでもを手中におさめている。

 

 しかし第一次世界大戦の最中、ロシア革命が起こる。

 社会主義革命によって内乱状態に陥り、結果ロシア臨時政府は敗北、『ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国』後の『ソビエト社会主義共和国連邦』が誕生する。

 第二次大戦で世界一多くの戦死者を出しながらも、歴史上ただ二つの超大国として君臨した。

 社会主義を国策とした初めての国であり、最後は崩壊こそしたが、『五ヵ年計画』によって世界恐慌を無傷で生き延びている。一時は社会主義を成功させていたのだ。


 1991年、ソビエトの継承国として『ロシア連邦』が誕生する。

 この国が現在のロシアだ。

 超大国からは陥落し、経済も低迷している。

 クリミア侵攻等に対しての対応策、EUやアメリカによる経済制裁が一定の効果を上げたのだ。

 軍事力は今だ世界三大軍事大国の一角をなしているが、その戦力を維持する金がないというのが現状である。


 しかし、制裁を受けてなおクリミアから軍を引かないのには理由があった。

 地政学地図上の戦略上、地形の牢獄に囚われたロシアにとってクリミアは生命線だからである。



 地図上のロシアは広い。

 しかし人口の過半数はウラル山脈西方のヨーロッパに偏っていて、『アジアの大国ではない』のだ。

 少し誇張にはなるが、中国人が一斉に北部へ移住すれば、自動でシベリアは中国領へ変わるだろう。

 また、その軍事力が封じられている。

 ロシアと対抗関係にあるのが北大西洋条約機構NATOだ。

 その加盟国によってロシアは包囲されている。

 と言うより、元々仲間だった国々が次々とNATOに寝返った。

 ポーランドやバルカン半島諸国、NATOには加盟していないがNATOよりのウクライナ、北欧やジョージア等である。

 元々NATOだったトルコによって、黒海艦隊の外洋進出は阻まれ続けているロシアだったが、黒海から出られなくてもなおクリミアが必要だった。

 ウクライナがNATOに加盟する事を危惧したのである。

 それはウクライナへの警告であり、もしもウクライナがNATOに加盟した際の対抗全線だ。

 ロシアにとって、国境を接する隣国がこれからNATOに加盟するのは、戦略上決して見逃すことが出来ない。

 

 戦争になる。


 これを恐れてか、NATOはウクライナやジョージアがNATOに加盟する事を拒絶し続けているのだ。


 また、極東にも艦隊を出すことが出来ない。

 日本海は日本の牛耳る内海であるからだ。

 それより北の港は一定期間凍りつく。

 ウラジオストクですら四ヶ月は氷に封鎖されるのだ。




·······しかし、このままではアメリカに自国の内海を荒らされる。

 ロシアはそれを避けるために、北方領土を支配し続けているのだ。

 もし日本に返せば、米軍はそこを通ってロシア内海に侵入できる。

 これがどれだけ危険なのか、ロシアは理解していた。

 だから北方領土を手放さないのである。


 野心もあるだろうが、国際社会から孤立したロシアはロシアで必死なのだ。

 幾度となく西から侵略を受けた歴史から、軍事的弱さを嫌う雪国。

 日本はこの国と、もう少し親密になるべきではと私は思う。




 多くの血塗られた歴史を持つ、世界最大の帝国『ロシア連邦』

 ソ連解体の日。その凄まじい影響力、軍事力、資源、領土は、国際社会から拒絶された。

 しかし圧倒的戦力と本土周辺の占領こそ、ロシアという国家の平穏である。

 今も昔も、変わらずに。

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